霧中外交、同盟の意義自問を

 フィリピンの大統領選で元検察官ドゥテルテ氏の当選が決まった。ダバオ市長時代は「犯罪者は殺す」と過激発言を繰り返し、処刑団を使って治安を劇的に改善したといわれ、日本や米国と協調していた対中政策の転換が懸念される。
 同国はかつて、親米政権が倒れたあと、米軍駐留の条約批准を否決した。結果、米軍が全面撤退すると、中国が目の前の南沙諸島に進出を始め、岩礁を占拠、埋め立てた。2年前には再駐留を認めたが、すでに人工島に滑走路まで出来てしまった。
 日本も「明日は我が身」。尖閣諸島周辺領海への中国の公船侵入は引きも切らず、日中中間線のガス田開発では軍事用のプラットホーム建設が進み、東日本大震災の直後には領空侵犯が続発した。これらの蛮行に、日本人なら恐怖と不安を覚えるのが普通の感覚ではないか。
 安倍首相はプーチン大統領との会談後、北方領土に関して「アイスブレーク(砕氷)できた」と語った。詳細な中身は分からないが、領土という互いに譲れぬ国家の主権をかけ、頭の痛い隣国をにらみつつ、経済協力、軍事同盟も含め、国益最優先の駆け引きが続く。
 他方、北朝鮮の金正恩第一書記は先の朝鮮労働党大会で、声高らかに核保有国を宣言した。5度目の核実験の準備を進めているとの報道もあり、イラク、リビアを教訓に、核とミサイルを手放す考えは毛頭ない。
 これらすべての国に大きな影響力を持つ米国の大統領選は、まさかのトランプ氏の芽が大きくなりつつあるという。現オバマ大統領は広島を訪れるが、「核なき世界」もいまは昔。日本人は両首脳の歴史的な画に感動するだけでなく、この大統領選と広島訪問を機に同盟基軸の米軍駐留の意義を考えねばならない。(静)

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