華やかな都会も死の街に

 埼玉県で中学1年生だった女の子が行方不明となり、2年ぶりに東京で無事保護された事件で、同県警が23歳の男を未成年者誘拐の疑いで逮捕した。男は犯行時、弁護士を装い、女の子に対して両親が離婚することになったとうそをついて拉致。女の子に逃げ出され、静岡県内で自殺しようとしたが死にきれなかったという。
 男は大阪の池田市出身で、難関校といわれる大阪教育大付属池田中学校・高校を卒業。大学は千葉大学に進み、中高時代の男を知る元同級生らは「絶対に悪いことをするような人じゃないと思っていた」「まじめで目立たない子だった」と驚き、一様に「まさか…」と首をかしげる。
 女の子を連れ去る際にはフルネームで声をかけ、車のナンバーをかえ、マンションの部屋には外から鍵をかけていた。犯行の準備は完璧なまでに周到で、計画的だったことは明らか。近所づきあいのない都会の事件とはいえ、2年間もだれも気づかなかったことが恐ろしい。
 マンションの隣の人の名前を知らないのはもちろん、どんな人が何人で住んでいるのかも知らないのも当たり前。そんな時代にあって、マンションはときに山の中と同じく、身元不明、死因不明の変死体が見つかる現場となる。発見が遅れ、腐敗が激しく、事件性がなければ、自殺か事故として処理されるケースも少なくない。
 先日、大阪市西成区で、路上生活者が設置したテントや小屋の行政代執行による撤去が行われた。追い出された人の中には身寄りがなく、死んでも悲しむ人さえいない人もいるだろう。夢に破れ、行き場を失った彼らを助けるふりをして、犯罪に巻き込むワルもいるかもしれない。春本番の桜の陰で、都会が孤独な死の街に見える。(静)

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