水木さんがくれた想像の翼

 「ゲゲゲの鬼太郎」の生みの親、水木しげるさんが93歳で亡くなった。他のことを書こうと思っていたが、次から次へ思い出が浮かんできて書かずにいられない
 ◆幼い頃、鬼太郎はヒーローの一人だった。父が頼みもしないのにコミックスを買ってきてくれたのだ。怪談話が好きだった父は妖怪の本もいろいろ買ってくれ、熱中して読んでは名前を暗記した。今でも100体ぐらいは空で言えると思う。ある時など、竹薮の中を通っていると強い風が吹いて砂がバラバラッと飛んできた。枝葉についていた泥が乾いて風に飛ばされたか何かしたのだろうが、無邪気にも「砂かけ婆だ、本当にいたんだ」と本気で喜んだものだ
◆お化けの話でありながら全編に漂うとぼけた明るさが魅力だった。もう少し大きくなり、戦争物の名作「総員玉砕せよ」も読んだ。ラバウルで左腕を失った水木さんの実体験が9割詰まった壮絶な内容であったが、その中にも不思議な明るさがあり、生命力が伝わってきた。大人になってからは自伝的作品「のんのんばあとオレ」「ねぼけ人生」を読んだ。笑えるうえに心にグッと迫るものがある、多くの人に読んでいただきたい名著である
◆近年、「妖怪ウォッチ」の大ブームに「やはり日本人は妖怪が好きなんだな」と意を強くしていた。バラエティ豊かな妖怪達は、人間のイマジネーション力の結晶ともいえる。水木さんは、目に見える、手で触れられる現実だけが世界のすべてではないことを、想像の翼を手に入れさえすれば実に豊かな世界に生きられることを教えてくれた
◆「熱中する能力、いわば『好き』の力ほど、人生を生きていくうえで大切な力はないような気がする」との名言を残された。かみしめると、勇気が湧いてくる気がする。     (里)

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