一人の少年としての有間皇子

 御坊市の岩内1号墳に埋葬説のある、飛鳥時代の悲劇の皇子・有間皇子。ことしも、東山の森Arkの主催で「有間皇子ことはじめ展」が開かれた。命日の11月11日にちなみ、毎年11月に開いている◆古墳現地での説明会では、御坊市の女性が「アリマ」という名だった愛犬の遺影を手に参加していた。十数年前に里中満智子の漫画「天上の虹」を読み、美しく描かれていた有間皇子から名付けたそうだ。その皇子の墓といわれる場所が御坊市にあることを最近初めて知り、参加したという◆「天上の虹」は昭和58年に始まり、完結がことし3月。中断もあるが実に32年に及ぶ大作である。筆者も高校時代に読み始め、まだ読了していない。有間皇子は、主人公の少女・讃良(さらら=のちの持統天皇)の初恋の相手として登場する◆戦国武将や幕末の志士が好きなミーハー歴史ファンの筆者は古代にはあまり関心がなかったが、現在本紙に「有間皇子の謎」を不定期連載する東睦子さん(東山の森Ark代表理事)との出会いで視点が変わった。有間皇子顕彰への並々ならぬ情熱に圧倒されながらその言葉に耳を傾けるうち、15歳で父の孝徳天皇と死別し広大な難波宮に取り残されたなど一人の少年としての有間皇子の像が浮かび上がった。そこからその時代の歴史の渦の行方に興味が湧き、調べれば調べるほど面白いということが分かってきた。この取り組みはNHK和歌山放送局の番組でも紹介され、東さんは「私だけが知っているのは勿体ない」と言われていたが、まったくその通りである◆漫画や文学などから得られる人間像のイメージは大きい。歴史とは決して小難しいだけの学問ではなく、要するに人と人との物語なのだ。(里)

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