花の絵に故人の心を偲ぶ

 故山中襄(のぼる)氏の絵画展が、御坊市薗の三ツ葉茶舗で今月30日まで開かれている。洋画白玄会創立メンバーで、戦後間もない頃の御坊の文化振興に貢献した1人。平成13年8月、87歳で他界。先日、長男の潤さん(川崎市)が帰郷し、会場を訪れた際に取材させて頂いた
 閉じこもって描くより、職場の仲間や友人を誘って写生に出かけるといった風な人。明るく前向きでお祭りが好き。そばにいるとホッとさせてくれる人だった。短距離走もやっており、「御坊で一番最初にスパイクをはいたのではないか」と潤さん。その一方で文化の振興活動に熱心で、絵だけでなく劇団活動も。潤さんを連れて、大阪などで開催される絵画展にもよく出かけていた
 襄さんには長い兵役経験があった。平和が訪れ帰郷した時、物が何もなくぜいたくもできない中で心を癒やすものは「文化だ」との思いで、地域の文化活動に力を注いだのではないかという。それは御坊に限らず、映画「ここに泉あり」のモデルとなった群馬交響楽団のように全国的なムーブメントであり、「父もその中の1人だったのではないか」と潤さんは言われた。そうして創立された白玄会の活動は連綿と続き、昨年、第50回の記念作品展が開かれた
 故人の姿が目に浮かぶような温かい生活の記憶は肉親や身近な人の心に残り、そして生活を離れた部分での美への志向、世界を見つめる眼差しは作品として結晶する。先人が遺してくれたそれを味わえる感性があれば、物がなくても豊かに生きられる
 会場には17点の花の絵。白い花器に生けられた赤い椿が特に印象に残った。厚みを感じさせる、澄んだ赤い色の花弁。年月を経ても生き続ける、故人の心のようだった。 (里)

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