戦争の史実を未来へつなぐ

 昭和20年の太平洋戦争終戦からことしでちょうど70年が経った。未来のある若者が命を投げ出して戦地で倒れ、原爆投下や空襲でも大きな被害を受けた。軍人230万人、一般人80万人の尊い命が奪われた。過去の歴史の中でも最も大きな過ちといえるだろう。戦争体験者がテレビで当時を振り返るシーンをよく見るが、「戦争だけはしてはいけない」と口をそろえる。
 5年前に96歳で亡くなったみなべ町在住の本多立太郎さんも反戦を訴えた1人。千島列島の占守島で敗戦を迎え、上陸してきたソ連軍に拘束されて2年間にわたってシベリアで抑留された。昭和22年に帰国し、「子どもや孫に軍服を着せたくない」と、全国各地を回って「戦争出前噺」を展開。その回数は1000回を超え、「戦争で残るのは別れと死だけ」と呼びかけ続けた。
 以前に本多さん宅を訪ねて取材させてもらった時、「いまの日本は日中戦争が始まった時と雰囲気が似てるように感じる」とポツリと警鐘を鳴らされていたことを覚えている。それから10年ほど経ったが、近隣諸国では中国の海洋進出の脅威がクローズアップされ、昨年にはロシアがクリミアに侵攻したこともあった。各国とも戦争兵器の開発に躍起になり、軍備の増強に努めているのは事実で、いつ戦争になってもおかしくないのかもしれない。
 戦争体験者が年々少なくなる中で、戦争の史実を未来へつなげることがいまを生きる人たちの使命。「人類の歴史は戦争の歴史」とも言われる。太平洋戦争終結から70年間。この70年は長かったのか、それとも短かったのか。いまの平和を束の間の休息としてはいけない。 (雄)

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