いまの若い人たちのために

 うっとうしい雨が続くなか、連日、8月の戦争体験者に話を聞く連載取材に走り回っている。サブタイトルは「それぞれの戦争を訪ねて」。これまで多くの方にお会い、あらためてそれぞれの戦争に対する思いには違いがあることを感じ、恐ろしい体験やいやな出来事を振り返っていただくことに申し訳ない気持ちになる。
 旧満州で終戦後にソ連軍の捕虜となり、いわゆる「シベリア抑留」で4年近くも極寒の強制収容所にいた人がいる。入隊後、どこへ行くのか、自分の任務は何かさえ教えられず、命じられるまま大陸を西へ東へ移動。気がつけばろくに食べ物も与えられない囚人のような生活で、ひたすら空腹にもだえ、すべての欲望が抑制され、思考が停止したという。
 終戦3カ月前に召集された戦艦の乗組員は、学校の軍事教練のような訓練を20日間受けただけで実戦投入され、7月24日には初めての戦闘で無数の艦載機に襲撃された。砲塔伝令室の中で、カンカンカンと音を立ててはね返る敵の機銃、味方の広角砲の音に震えながら、すさまじい爆発音と衝撃と同時に、目の前に火柱が落ちてきた瞬間、意識を失った。
 また、戦争当時は高等女学校生だった88歳の女性は、動員学徒として毎日、軍需工場で働いていた。同級生の友達は満州へ渡った警官の父と暮らしたいと、周りの制止を振り切って海を渡り、終戦時、将来を悲観して父と刺し違え、自決したという。
 国全体が異常な時代だった。取材という形で思い出したくもない過去を振り返ることで、忘れていた痛みや悲しみを感じてしまう方もおられるはず。記者とはつくづく残酷な生き物ではあるが、「いまの若い人たちにぜひ話しておきたい」という方は、編集部までご連絡を。 (静)

関連記事

フォトニュース

  1. 日高の魅力をPRします!

写真集

戦争体験者に聞く 終わらざる夏

  1. 乳飲み子抱え上海から引き揚げ 御坊市島に暮らす98歳の嘉美(よしみ)さんは、1921年(大正1…
  2. 34年前、活字にならなかった一冊の本 活字の本として出版されることのなかった、一冊の戦争体験集…
  3. 船団護衛の海防艦で南方へ 1923年(大正12)8月19日、夏目英一さん(95)は日高郡旧野口…
  4. 千人針と250人分の寄せ書き発見 「あれ、これは何やろ」 1999年(平成11)8月、母の薫(か…
  5. 飛行兵志願も母が反対 小瀬輔造さん(89)は1930年(昭和5)1月7日、日高川町…

日高地方などのイベント情報

現在予定されているイベントはありません。

Twitter

書籍レビュー

  1.  「バイバイ、ブラックバード」を読むと、原典に当たる太宰治の「グッド・バイ」が読みたくなったので、文…
  2.  作者の生まれは明治18年。明治45年に執筆され、初版は大正10年とかなり古いですが、繊細な描写が特…
  3.  6月19日は桜桃忌。芥川龍之介の河童忌、司馬遼太郎の菜の花忌ほど有名ではありませんが、太宰治の命日…
  4.  銀行に7年間勤務した経験を持ち、「半沢直樹」「陸王」「ルーズヴェルト・ゲーム」など人気ドラマの原作…
  5.  幅が狭く、カーブが続き、前から車がくればすれ違うこともできず、一つ間違えば谷底に転落してしまう…。…
ページ上部へ戻る