氷上の表現者の戦い

 平成27年度市民教養講座がスタート。第1回はプロフィギュアスケーターの鈴木明子さんが講師を務め、6歳から五輪までスケート人生を振り返った◆再三語られたのは、自身が非常に「怖がり」だということ。何かあるとすぐに「どうしよう」と緊張してしまう。冬季五輪のテレビ中継などを見て、全世界の人が注視する中で演技するなど並大抵の精神力ではできないだろうなと思っていたが、鈴木さんは24歳で出場したバンクーバー五輪を「怖くて怖くて逃げ出したかった」と振り返った。直前の6分間練習がうまくいかず、不安が最高潮に達してしまったという。最初のポーズの時、伸ばした手の先がプルプルと震えていて、「あ、私いま緊張してる」と思った◆しかし、ここで鈴木さんは「緊張をも楽しんでしまう」境地に。18歳で摂食障害と戦っていたとき支えになってくれた母から「いいよ、緊張して。緊張を楽しんできなさい」という言葉をもらっていたのだ。そうなると「私は今まで、直前の6分なんかで左右されるような生半可な練習はしていない」と腹をくくることができた。「緊張感も大事。それがまったくなかったら演技はできない」という。「いい緊張」へと持っていき、自分自身をコントロールして楽しむことを鈴木さんは五輪という大舞台で自分のものにした。五輪の連続入賞は、日本女子では他に伊藤みどり、佐藤有香、村主章枝、浅田真央の4人だけである◆フィギュアは他のスポーツとは違って芸術の要素が強く、表現者としての個性が求められる。小さい頃から表現力に定評があったという彼女は今、振り付け師を目指している。講演活動も含め、新たな表現の場を楽しんでいるようだ。リンクの上とはひと味違うストレートヘアと爽やかな笑顔が印象的だった。(里)

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