三尾の磯焼け訴訟 漁協側は控訴断念

 アワビ等の漁獲量が激減したのは県営椿山ダムから排出される濁質が原因だとして、美浜町の三尾漁協(村尾敏一組合長)と組合員58人が県を相手に損害賠償等を求め、和歌山地裁が原告側の訴えを退けた先月30日の判決に対し、同漁協は13日、控訴しない考えを発表した。村尾組合長(81)は断念の理由について、「5年前の国の公害等調整委員会の裁定申請棄却に続く二度の不当な結果を受け、控訴しても同じ結果になるだろうと考えた」と述べた。
 三尾地先のアワビなど貝類の水揚げは、昭和63年の椿山ダム竣工後から年々減少しており、漁協は原因がダムからの濁水にあるとして県に対策を要望。平成6年に発表された日高港湾整備計画に絡み、3年後には漁協と知事との間で濁水対策の覚書が交わされたが、漁協側は「この内容が十分に果たされていない」として両者の溝が深まった。
 漁協側は、組合と85人の組合員が16年6月に県の公害調整委員会に調停を申請、18年9月には国の公害等調整委員会に原因裁定を申請したが、裁定委は22年6月、漁協側の申請を棄却。23年1月には調整委員会が調停案への合意が見込めないとして、調停を打ち切った。これを受け、漁協側は同年2月、組合と58人が県を相手に、約5億7000万円の損害賠償等を求める訴えを起こし、約4年後の先月30日、和歌山地裁の橋本眞一裁判長が「ダムの設置と三尾の磯焼けとの因果関係は認められない」とし、漁協側の訴えを全面的に退けた。
 漁協は弁護士をまじえて対応を協議した結果、控訴しないことを決定。申請期限の13日、村尾組合長が発表した。
 村尾組合長は「私たちはこれまで真実を貫くために努力をしてきたが、残念ながら訴えは認められず、行政側に偏った不当な判決が下された。5年前の調整委員会の裁定委の結果は不服を申し立てることができず、やむなく裁判という形をとったが、今回の判決は(野島沿岸と三尾地先の海底地形の違いなど)裁定委の判断を前提としている点もあり、当然ながら控訴を求める声も根強いなか、最終的には『(法廷の)場所を変えても同じ結果になるだろう』と考え、泣き寝入りではないが、控訴しないことに決まった」と話した。

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