日本人にもリスペクトを

 映画『風に立つライオン』が14日から公開される。原作は、ケニアで診療所の医師として活動を続けた日本人の実話を基に、さだまさしが28年前に15年がかりで完成させた曲。アフリカに住む日本人の医師が、日本に残してきた元恋人にあてた手紙が歌詞となっている。
 日本など先進国と呼ばれる経済大国に比べ、アフリカや中南米の国々は公衆衛生が進んでおらず、環境汚染や感染症の発生が深刻な問題。こうしたいわゆる「途上国」の人たちの生活環境、食生活は、私たち現代の日本人からすれば「貧しい」と感じるが、おそらく、その国に暮らす人々は自分たちを貧しいとは考えていない。
 車やスマホがなく、日本と比べれば「不便」なのは間違いないが、その国に生まれ育った人にとっては日本人の快適な都市生活など未知の世界。見たことも聞いたこともない世界は「ない」のと同じで、ないものと勝手に比べて「貧しい」と考えるのは、先進国目線の不遜な思い込みではないか。
 日本では都会から田舎に移り住み、自給自足で生きる人の暮らしを「人生の楽園」と紹介する番組があるが、田舎暮らしをする理由や目的はさまざま。田舎へ移り住んだ人のすべてが楽園を求めている訳でもなければ、空気の汚い東京や大阪で満員電車に揺られる会社員の人生が「楽園でない」訳でもない。
 『風に立つライオン』の「やはり僕たちの国は残念だけれど 何か大切なところで道を間違えたようですね」という部分。アフリカの自然、人々の瞳の美しさ、心の健康さを否定はしないが、日本が道を誤り、国民が不健康な生き方をしているとは思わない。映画を見たあと、この国に生きる日本人にもあらためて尊敬の念を。   (静)

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