隣は何をする人ぞ

 紀の川市の市立名手小学校5年、森田都史君(11)が刺殺され、近所に住む中村桜洲容疑者(22)が殺人の疑いで逮捕された。司法解剖の結果、死因は心臓を刺されたことによる失血死。刃物で心臓を貫通させ、ほぼ即死だったとみられる。頭の骨が割れ、両腕にも複数の傷があったという。残虐極まりない犯行で、幼い少年を狙った決して許すことができない凶悪犯罪といえる。
 日高地方のような片田舎でもこうした事件が発生する可能性はないとは言い切れず、大きな事件には至っていないものの日常的と言っていいほど不審者の出没などが起こっている。地域の安全確保は警察の力に頼るだけでなく、住民が防犯に対する意識を高めることが重要だ。それには人と人とのつながりを深め、不審な人が入ってくればすぐに情報が共有化されるという田舎特有の力も役立つのではなかろうか。しかし、近年はそういう関係が希薄化しつつある。「秋深き(し)隣は何をする人ぞ」。松尾芭蕉が亡くなる十数日前に詠んだ俳句である。本来は、芭蕉が病気のため欠席することになった俳席の出席者に、「私は床に伏せっていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか」という相手への気遣いの気持ちを込めて送った一句だという。ところが現代はことわざのように、「物音一つ立てずひっそりと暮らしている隣人は、一体何を生業にしている人なのだろう」と不審感の意味で用いられて、都会の孤独さを表すのによく引用される。
 紀の川市の事件で捕まった中村容疑者は殺害された森田君の実家とは100㍍程度しか離れていなかった。最近では田舎でも近隣に住む人の行動を気にかける必要がありそうだ。
       (雄)

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