雑巾がけで心を磨く

 日高高校剣道部の同校創立百周年記念事業講演会。剣道教士八段・栄花(えいが)直輝さん(47)=北海道県警=が「ただ一撃にかける」をテーマに語った。今月15日付10面の記事では掲載できなかった部分を紹介したい。
 全日本選手権を制した前年の大会では準々決勝で2連覇を狙う宮崎正裕選手に面と胴を奪われ、敗退した。宮崎選手は面を得意とし、「面は必ず何本も使う」と予想していた。万全に研究、対策も練って臨んだ大一番。「ここだ」と相手が面を打ち込んできた瞬間、面をかわして胴を決めたと思ったが、審判員の旗は相手に3本上がっていた。
 翌日、自宅に帰ってビデオを観ると、相手の「面あり」と確認できた。「死に物狂い」に稽古して臨んだ試合。決まったと思った胴も決まっておらず、それから稽古に身が入らなくなったという。
 そんなとき、一冊の本に出合った。その本には「一に清掃、二に勤行」と書かれており、「すごい練習をする」のは2番目、まず一番に清掃からやってみようと、警察学校の道場の雑巾がけを行うようにした。やり始めると、「自分のふいた床が光り輝いて見える。床に足が吸い付く、気持ちがいい」。心地よい環境の中で日々の練習をすることが、のちの世界大会や全日本選手権の優勝につながったと話していた。
 技術的に変わったことはない。それでも優勝できたのは、雑巾がけを通じて心が磨かれた、人間力が増したからと伝えたかったのではないだろうか。「自分から何かを見つけ、進んでやることが、剣道の技術の向上にも間違いなくつながる」と栄花さん。勉強でも仕事でも同じことがあるだろう。とても胸に響く講演だった。   (賀)

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