県が住民の寄付でがん先進医療に補助

 県は県民からの寄付を基に新しく「がん先進医療支援事業補助金」制度をつくり、経済的な理由などからがんの先進医療を受けるのが難しい人を対象に、治療費の2分の1以内(最大150万円)を補助する事業をスタートさせた。対象となるのは重粒子線や陽子線の放射線治療など。県内にはまだこれらの先進放射線治療を受けられる施設はないが、暮らしに安心を与える医療政策として、利用を呼びかけている。
 県はがんで亡くなる人を減らし、がんになっても安心して暮らせる支援体制づくりを推進。ことし5月、海南市下津町に住む元土木建設業、芝本十三さんが県庁を訪れ、「経済的な理由でがんの先進医療を受けられない人のために役立てて」と多額の寄付があったのを受け、寄付金を基に補助制度をつくり、9月の一般会計補正予算に事業費を計上した。芝本さんは数年前に妻をがんで亡くし、自身も寄付をしたあとに75歳で亡くなった。
 補助金を申請するには、▽応募時点で1年以上引き続き和歌山県内に住所がある▽国内でがん治療を目的とした先進医療を受けることを決め、主治医の推薦を受けた▽申請者とその世帯員の預貯金など金融資産の合計が600万円以内▽がん先進医療にかかる給付金を受け取る保険契約を結んでいない――などが条件となる。
 補助制度は予算がなくなりしだい終了となるが、県は制度をそのまま残し、芝本さんと同様の趣旨の寄付があれば再開する方針。仁坂吉伸知事は「芝本さんは、『お金がなくてがん先進医療を受けられないというような人がいたら気の毒だから、そういう人のために使ってほしい』とおっしゃっておられた。芝本さんの遺言といったらおかしいが、経済的な理由で先進医療を十分に受けられないけれど、医師が『保険対象でない先進医療を受ければよくなるはずだ』という方には、どんどんこの補助金から(治療費を)出させていただく」と話している。
 この補助金の対象となるのは、公的医療保険の適用がないがん治療を目的とした先進医療で、重粒子線や陽子線の放射線治療が中心になるとみられている。
 重粒子線はがんだけをピンポイントでたたくことができ、他のX線やガンマ線とは違い、体の奥のがん細胞のところでエネルギーがピークとなり、前後で弱くなるため、皮膚や周囲の正常な細胞が傷つく副作用が最小限に抑えられる。また、1回の照射のエネルギーが大きいため、他の放射線に比べて治療にかかる照射回数が少ない。
 対象となるのは前立腺や肺、肝臓、頭頸部など局所にとどまっている固形のがんで、X線が効きにくい骨肉腫や筋肉、脂肪などにできる軟部腫瘍も得意とする。逆に、白血病など血液のがんや広範に転移したがん、胃や大腸など不規則に動く臓器のがんは対象とならない。
 重粒子線も陽子線も県内にはまだ治療できる医療機関はないが、近くでは兵庫県たつの市の県立粒子線医療センター(重粒子線・陽子線)福井県福井市の県立病院陽子線がん治療センター(陽子線)などで治療が行われている。この2つの放射線治療のほか、9月現在、がん治療を目的とした先進医療は36種類があるという。
 補助制度に関する問い合わせは県庁健康推進課がん・疾病対策班℡073―441―2640。

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