受け継がれる伝統の音と心

 日高高校箏曲部を初めて取材したのは20年近く前。以後、メンバーは年々入れ替わっているはずなのに、不思議なことに受ける印象は一貫しており、凜とした折り目正しさをいつも感じる。笑顔で話してくれるその奥に、一本筋の通った感じがある。創部46年目にして最少人数、全部員数6人のことしもそれは変わらない
 先月末の県高校総合文化祭邦楽部門では、2・3年生担当の曲には繊細な難曲「箏(こと)ふたつ」を選んだ。大人数での迫力ある演奏とは異なる少人数ならではのよさ、繊細さを前面に出す。1人1人の演奏には更なる完成度の高さが求められる。練習量にかけては運動部にひけをとらない箏曲部、夏休み返上で練習を重ねてきたが、直前になっても完璧とまではいっていなかったという。ところが会場のアクシデントで開催が一日順延。僥倖のようなこの時間を部員は無心に練習に励み、ほぼ完璧に仕上げられた。20人、30人の大編成に混じって少人数で奏でた曲は聴く人の心を捉え、同部は堂々の準優勝を果たした。この一日は、無心に音楽に打ち込む者にだけもたらされる、琴の神様のプレゼントだったかもしれない
 そして12月14日、京都市コンサートホールで開かれる「全国高校生伝統文化フェスティバル」に、同部は西ブロックを代表して出演する。長年の実績の積み重ねが評価されての選抜である。同部にはうらやましいような縦のつながりがあり、卒業生との絆は強い。この選抜も、何代にもわたる先輩達から後輩へのプレゼントともいえるかもしれない
 3年生の部長に全国フェスティバル出場の取材をしていると、隣室から他の部員達の練習の音が聞こえてきた。20年前から聴いてきたのと同じく、凜と澄んで力がこもっていた。 (里)

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