日高町の中町長を偲んで

 日高町の中善夫町長が亡くなった。筆者とは三十数年来の付き合いで、出会いは御坊警察署で取材中の時。「日高新報さんかい。わし、あんたとことは付き合い長いんやで。1回飲みにでもいこか」と気さくに声をかけてくれた。その後、日高町の担当になり、公私ともにお世話になった。
 中さんを一言でいうと「気遣いの人」という言葉がピッタリだった。ある時、共通の知人が和歌山市から電話で「そっちのおいしいタチウオが食べたい」と言ってきた。2、3度食事などをしただけの関係だったが、中さんは快く了解し、タチウオを自分で釣って和歌山市まで持っていった。筆者も同行したが、段取りはすべて中さんがやってくれた。
 中さんという人は万事がこうした調子で、心も体も休まる時がないのではといつも思っていた。部下の面倒見がよく、常に相手の立場で考える。そんな中さんに「そんなに毎日気遣って生きてたらしんどくないか」と聞くと、「そりゃあ自分がやってあげたことにいい結果が出なかったら確かにしんどい。でも喜んでもらえた時は、そんなしんどさなんて吹っ飛んでしまう」と笑っていた。
 会葬の礼状で奥さんは「夫は仕事一筋に頑張ってまいりました。町政を双肩に担い、土曜も日曜も関係なく働く毎日は大変だったに違いありません。しかし地域の発展に少しでも貢献でき、その中で支えて下さった多くの方と良きご縁を結び、夫は苦労以上にやり甲斐を感じられる日々を謳歌しておりました」と述べており、中さんの気持ちがやっと分かったような気がした。
 中さん、どうか安らかに。そして少しは肩の力を抜いて、大好きなウナギをあてにビールでも飲みながら、日高町を見守っていて下さい。    (高)

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