裁判の傍聴で感じたこと

 1年半前、JR御坊駅前で発生した旅館経営者殺害事件に先日、判決が下った。これまでも管内で殺人事件はあったが、身内や同僚の怨恨などとは違い、旅館の女将さんが宿泊客に殺されるという通り魔に近い凄惨な事件は過去にほとんど例がなく、記者となって17年のうちで最も衝撃的な事件だった。発生当初から関係者や周辺の多くの住民に話を聞いたが、浮かんできたのは女将さんの優しい人柄。犯人は1カ月後に逃亡先の姫路市で逮捕されて解決したが、なぜ殺さなければならなかったのか、まったく理解できなかった。
 1年半たってもその思いは消えず、裁判員裁判を初めて傍聴した。宿泊代が支払えないのなら、金が欲しいのなら、女将さんが外出している間に盗んで逃げればよかったのではないのか。裁判では支払いを猶予してもらえると思い込んだ犯人が、期待通りの言葉をもらえなかったことに自暴自棄になったのが動機とされた。司法の判断なので納得するしかないが、本当にそんなことで突発的に人を殺そうと思うのだろうか。なぜ凶器を常に持っていたのか。少し消化不良の初傍聴だった。
 裁判を通して感じたことは、一人の身勝手な犯行が多くの人を傷つけたということ。最愛の家族を奪われた遺族の悲しみは筆者が到底表現できるものではなく、犯人の友人も事件を防げなかったことを涙ながらに意見していた。犯人が罪を償ってすべてが解決するものではないということだ。とにかくこんな悲惨な事件は二度と起きてほしくない。そのためにも、犯人はどんな環境で育ち、どんな幼少時代を過ごしたのか。人をあやめる心の闇がどこでできてしまったのか。裁判では細部にわたって明らかにしてほしいと感じた。     (片)

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