歌舞伎新世代の仕事に期待

 先日、夕方のニュースで「スーパー歌舞伎」という言葉が耳に飛び込み、慌ててテレビの前に走った。一昨年四代目を襲名した市川猿之助が、三代目(現猿翁)の創始したスーパー歌舞伎を受け継ぎ、「スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)」として新作に取り組むという。
 1999年秋、三代目市川猿之助一門御坊公演に向けて女方俳優の市川笑也さんに取材したのが歌舞伎にハマる始まりだった。7作目のスーパー歌舞伎「新・三国志」を上演中の大阪松竹座で、笑也さんは合間の1時間を本紙等の取材に充ててくれた。三代目について「大きな人。いわば歌舞伎界の外資系社長」と語り、「猿之助歌舞伎の行く末を見届けたい」と遠くを見はるかすように目を輝かせた、その姿から笑也さんのファンに、「新・三国志」と御坊公演で三代目のファンになった。2003年に三代目が倒れてから、一昨年の四代目襲名と実子香川照之の歌舞伎界入りまでずっと淋しい思いをしていた。スーパー歌舞伎が見事再生すれば、これで三代目の大きな仕事は次世代に立派に引き継がれたことになる。
 舞台芸術の成否の基準はただ一つ、観客の心をつかんだか否か。クラシックコンサートでもお笑いでもそれは変わらない。この目で舞台を観るまでは、喜ぶのはまだ早いかもしれないが、若い世代が意欲を見せてくれること自体喜ばしい。新作発表のニュースで久々に笑也さんの姿を見たのも嬉しかった。
 三代目が実質的に舞台を離れて10年。また一昨年は十八世中村勘三郎、昨年は十二世市川団十郎と巨星が相次いで世を去った歌舞伎界。新しい世代の新しい仕事がファンを勇気づけてくれることを念じつつ、上演を心待ちにしている。 (里)

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