学校の背負う重みある歴史

 原則として隔週水曜日付2面で連載の「日高高校百年史こぼれ話」。先日、2部に当たる日高中学校の部が終了し、現在は日高工業の部だ。
 旧制日高中学校に関する写真資料は、女学校に比べあまり残されていない。数少ない貴重な写真を紹介しながら、それに応じたテーマで「こぼれ話」は綴られた。開校時に校舎がなく、松原小学校を間借りしたこと。創立10周年記念事業で500人が乗ってもびくともしない野球スタンドが建設され、それを機に野球熱が高まったこと。正門近くに現在も立つソテツは植えられてから88年、樹齢は100年を超えること。忍び寄る戦争の影とともに学校の雰囲気は一変したこと。
 個人的にはソテツの逸話が印象に残った。昭和5年発行の学友会誌「茜」表紙絵のソテツ、現在のソテツの写真が並べて紹介されたが、樹形はほぼ同じ。高校時代に毎日見ていたあのソテツは、戦前から学校と同じ時間を過ごしてきたんだなと実感できた。
 この時の稿では、初代校長の山下與三吉氏が「森の中の学校」をイメージし、木々を植えたことが述べられる。中庭には月桂樹や花アカシア、修道館の周りに楠や柏槙(ビャクシン)。農林学校跡地なので牧草が残り、プラタナスやポプラもあった。美浜町生まれの筆者は松林に囲まれた小中学校に通ったので、「森の中の学校」には心ひかれる。しかし残念ながら軍事化の進行で手入れが行き届かず、学校の森は現在残っていない。
 人に歴史ありという。多くの人々の思いが結晶となって運営される「学校」という存在も、重みある歴史を背負っている。そのことを教えてくれる「百年史こぼれ話」。現在連載中の日高工業の部が最終章となる。引き続きご愛読願いたい。   (里)

関連記事

フォトニュース

  1. 薬なんかいらんわ!

写真集

戦争体験者に聞く 終わらざる夏

  1. 乳飲み子抱え上海から引き揚げ 御坊市島に暮らす98歳の嘉美(よしみ)さんは、1921年(大正1…
  2. 34年前、活字にならなかった一冊の本 活字の本として出版されることのなかった、一冊の戦争体験集…
  3. 船団護衛の海防艦で南方へ 1923年(大正12)8月19日、夏目英一さん(95)は日高郡旧野口…
  4. 千人針と250人分の寄せ書き発見 「あれ、これは何やろ」 1999年(平成11)8月、母の薫(か…
  5. 飛行兵志願も母が反対 小瀬輔造さん(89)は1930年(昭和5)1月7日、日高川町…

日高地方などのイベント情報

現在予定されているイベントはありません。

Twitter

書籍レビュー

  1.  「バイバイ、ブラックバード」を読むと、原典に当たる太宰治の「グッド・バイ」が読みたくなったので、文…
  2.  作者の生まれは明治18年。明治45年に執筆され、初版は大正10年とかなり古いですが、繊細な描写が特…
  3.  6月19日は桜桃忌。芥川龍之介の河童忌、司馬遼太郎の菜の花忌ほど有名ではありませんが、太宰治の命日…
  4.  銀行に7年間勤務した経験を持ち、「半沢直樹」「陸王」「ルーズヴェルト・ゲーム」など人気ドラマの原作…
  5.  幅が狭く、カーブが続き、前から車がくればすれ違うこともできず、一つ間違えば谷底に転落してしまう…。…
ページ上部へ戻る