黙秘権はゴミ屋敷化のサイン

 「おまえには黙秘権と弁護士を呼ぶ権利がある…」。アメリカの警察官が犯人を取り押さえ、逮捕する瞬間に読み上げる「ミランダ・ルール」と呼ばれる警告。映画ではよく主役の刑事が凶暴な相手に銃口を向け、背中越しに身体検査をしながら、面倒くさそうに告げるシーンがかっこいい。
 黙秘権とは、自分に不利益になると思う供述は強要されないという権利。通常、刑事裁判や警察の取り調べ以外に、ふだんの生活でこの権利を行使することも、言葉自体を使うこともない。が、日常生活でも、「黙秘権か」とツッコミを入れたくなるほど、何もしゃべらない相手に困ることがある。
 たとえば、会社の上司と部下。ミスを繰り返す部下に「なぜこんなことになるのか」「おまえはどう思うのか」などと、何を聞いても「はい」としかいわない。教師と生徒もしかり、このような生徒に比べ、教師に対して反抗的に食ってかかってくる不良の方がはるかに指導しやすいという。
 公共工事の用地交渉でも、相手がこのような黙秘権行使型のケースはある。担当者がアポをとって訪ねても居留守を使い、テーブルについてもハナからだんまりで、理由もなく「NO」。取りつくしまもないとはまさにこのことで、何度出向いても同じことの繰り返し。いっそ法外な値段や必要以上の補償を要求された方が、交渉の糸口をつかめるだけにやりやすいとも聞く。
 社会生活の中の黙秘権行使は、コミュニケーション能力に障害があると受け取られてしまいがち。周りに疎まれ、気がつけばゴミ屋敷の主のように孤立し、心身の健康を損なってしまうことにもなる。
 日常的な黙秘権はその前兆。周囲がつながりを切らさず、粘り強くかかわっていくことが必要だ。 (静)

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