半沢直樹にはまるわけ

 「やられたら、やり返す。倍返しだ!」。同僚との会話中に言ってみたところ、同僚にはポカンとした顔をされた。ことし一番のヒットドラマ、30%近い視聴率をたたき出す番組で、主人公が放つ決めぜりふ。かっこよく、しかもその場を和まそうと口にしたのだが、不発に終わった。
 テレビドラマは大好きだが、このクールは「半沢直樹」に大はまりしている。バブル期に大手銀行に入行した主人公。前半の第5話までは、関西を舞台にだまし取られた5億円の融資を取り戻すストーリーが展開された。ドラマの中では、たびたび繰り返されていた「部下の手柄は上司のもの。上司の失敗は部下の責任」というバンカー(銀行員)の世界で、半沢は真逆の態度でことに当たる。ミスを犯した部下の責任を潔く自分の責任でもあると認めるシーン、不正に手を染めた上司をどんどん追い詰めていくスリリングな進行がたまらなくおもしろかった。
 半沢の上司と違って、半沢自身は部下から信頼を集める上司。信頼を集めるからこそ、窮地には助けてももらえる。それに家族とも強い絆で結ばれている。「金さえあれば何でもできると思ってたら大間違いだ。お前は社長の器ではない」などと悪を懲らしめる際の一言もスカッとさせられ、ことし一番の視聴率というのも納得だ。
 世間にありふれたものを映してもヒットしない。半沢の生き様は、ごく普通の正義を貫いているだけのことだが、この「ごく普通の正義」が少ないからあらためてみせられると痛快に感じる。現実では「倍返しだ」なんて物騒なことは心に思ってはいても口にできるわけがなく、主人公になった気分で番組にはまっている。 (賀)

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