75歳の大学院卒業生に学ぶ

 「一生勉強」。毎日が勉強と考え、精いっぱい生きて充実した生活を送ることでさまざまなことを吸収する。人によってはそれこそ参考書や専門書をめくる勉強も大事。仕事のスキルアップ、生活レベルの向上、新たな目標へ専門知識習得、資格取得に励んでいる人もいるだろう。ただ、日々の暮らしに追われて勉強ができない、しようと思わない。若いころと比べて気力も記憶力も低下している。30代にもなると、大学を志す人はごくわずか。
 日高川町の農業、瀧川泰彦さんが和歌山大学大学院の経済学研究科経済学専攻の修士課程を修了、学位を取得した。年齢は75歳。大阪市からのIターン者で、平成12年から日高川町で農業を営み、第二の人生を満喫している。そんな暮らしの中、農業の課題を痛感、専門的な知識を身につけようと73歳で大学院に挑戦、見事一発で合格した。農業の傍ら大学院に通い、2年間で14科目、32単位を取得。オールA評価という抜群の成績だった。
 そんな瀧川さんを見ていると、「一生勉強」という言葉が心に染みる。日高川町に来てからだけでも大学院のことをはじめ、学びっぱなしの人生。農業も地域住民に学んだり独学で身につけ、今や観光客らに米作りを教える先生だ。中津出身とされる女形歌舞伎役者、芳澤あやめに関するシナリオ本を書き、浄瑠璃人形も作った。人形作りは、淡路人形制作の第一人者に教わり、動きを学ぶため大阪で文楽を何度も鑑賞した。和歌山大学が考案した「農業用アシストスーツ」ももともとは彼のアイデア。さまざまなことに疑問を持ち課題を見つけ、解決方法を考えようとする彼の学びの精神が生んだ。一生勉強。ぼんやりとではなく、強く肝に銘じたい。    (昌)

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