想定気にせず最善を

 先日、印南町自主防災会連絡協議会の講演会を取材し、 東日本大震災の津波から多くの小中学生が生き延びた 「釜石の奇跡」 の立役者である群馬大学の片田敏孝教授の話を聴いた。 印象的だったのが、 全国的には津波の高さが20メートルを超えるところもあるという新想定について 「可能性はあるかどうかで言えばあるという程度で、 1000年に1度の確率。 自動車事故に比べると何倍も低い。 とらわれる必要がない」 と想定を気にしないよう主張していたこと。 釜石の奇跡と言えば浸水エリアに入っていなかった小中学校の児童、 生徒が、 片田教授の防災教育で 「想定を超える事態もありうる」 との指導を受け、 次々と高台へ避難していったことでほとんどが助かった出来事だ。
 新想定が出て浸水エリアが広がったことでさらに危機感を強める必要性を訴えるかと思ったが、そうではなかった。むしろ恐怖心を与えて危機感を持たすやり方は長続きしないと主張し、 新想定を発表したこと自体に疑問を投げかけ、 想定に臆して自暴自棄になることなく、 最善を尽くすよう訴えていた。
 確かに新想定が出てからは、 想定の高さ以下での訓練や備えがまるで無駄だったかのような風潮になっていることは否めない。 片田教授も指摘していたが、 想定は学者の鉛筆ひとつでころころ変わる。 さらにその高さは1000年に1度の確率でしかない。 想定が低いからといって安心せず、 また高すぎるからといってあきらめる必要はない。 万が一の際は、 可能な限りの高台を目指して逃げるだけ。 「地震がきたら逃げる」。 当たり前のことだが、 講演を聴きながらその必要性をあらためて認識させられた。     (城)

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