人の心に宿る卒業桜

 春は別れと出会いの季節。別れを惜しみ、出会いを喜び、そんな我々の姿を見守っている桜は、いつの時代も心に深く宿るもの。筆者は美浜町の出身であるが、県道から松洋中学校へと続く桜並木は見事で、この季節になると桜吹雪に包まれながら友達とふざけ合って登下校した遠い記憶がよみがえる。
 日高川町の川辺西小学校には「卒業桜」と呼ばれる早咲きの桜がある。種類などは不明だが、ソメイヨシノより2~3週間早く咲くため、卒業シーズンを彩る花として長年にわたり児童、教職員をはじめ、地域住民らに親しまれている。桜は、同校が矢田尋常高等小学校時代の昭和13年に児童らが卒業記念として植樹した。この季節になると木いっぱいにかれんな花を付け、学びやを巣立つ児童らを見送り、卒業生をはじめ、多くの人の心に宿っている。3年前、京都に住む岡本さんという人が子と孫とともに同校を訪れ、卒業桜の下で3世代一緒に記念撮影を行った。岡本さんの亡き父は、桜を植樹した昭和13年当時の校長で卒業桜と縁が深く、写真撮影は亡き父のこととともに70年以上も地域で愛され続けている桜を子、孫へ伝えたいという思いからだったそうだ。
 多くの人が愛してやまない桜の木も高齢で衰弱が著しい。数年前には栄養がゆきわたるようにと大きな幹を切り落としたほど。昨年までは心配をよそに50輪ほどの花を付けたが、ことしは枝さえも生えてきておらず、とうとう花は咲きそうにもない。この桜の苗木で育てたクローン桜は4日に開花した。平成15年に植樹、19年の初開花以来、年々花を増やしている。母樹に代わって子どもたちを見守るとともに、母樹ともども多くの人の心に宿り続けてもらいたい。(昌)

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