すべてが歌になっていく

 「この広い野原いっぱい」という歌を初めて知ったのは小学生の時、少女漫画で。病気の少女に少年がギターと歌を聴かせる。それがこの歌だった。「花や星、世界にあるものみんなあげるから私に手紙を書いて」という内容だ。デビュー曲のそれを皮切りに、「森山良子コンサートツアー」御坊公演は始まった◆デビュー45周年アルバム「すべてが歌になっていった」の記念ツアーで、この日が最終公演。3時間近いステージで披露された曲は実に多彩で、森山さんの歴史が凝縮された感があった。1973年にロンドンで録音したロック調の曲。オペラの一場面のようにドラマチックな曲。独特のリズムが弾むタンゴ調の曲。ファンだという韓流ドラマの曲も飛び出したほか、クラシックを中心とした新譜からはショパンの「小犬のワルツ」のアレンジ曲。歌詞は、恋人の小犬に焼きもちを焼いて追い出そうと奮闘する女性の話で、コミカルな歌いぶりが笑いを誘った。そしてクライマックスは、長年うたい継いできた名曲「涙そうそう」「さとうきび畑」。深い情感ある声でじっくりと聴かせた◆取材を離れ一音楽ファンとして楽しませてもらいながら、その奔放な音楽観、世界観を心地よく感じた。まさに「すべてが歌になっていった」という感じで、自由自在に表現する喜びがあふれている。「また君に恋してる」などを手がけた作詞家松井五郎さんら、多くの人とのかかわりもトークで語られた。歌から出会いが生まれ、出会いからまた歌が生まれる◆心を形にする術を知っている人には、花も星も、目に映るすべてが歌になっていく。これからもずっとそうなのだろうなと、憧憬の念をもって舞台を見ていた。
       (里)

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