冬至に一陽来復を思う

 月替わりのカレンダーなら最後の1枚、日めくりならあと10枚。地球の公転によってできた「1年」という周期の区切りを感じる時期だ。
 冲方丁著の時代小説「天地明察」を読んだ。江戸時代に日本独自の暦を算出し、改暦を実現させた安井算哲の生涯を綴った物語。映画も見たが、なかなかの快作であった。この中で、「暦は天と人、人と人との約束」と説かれる。星々と太陽の壮大な巡りが、人々の暮らしのリズムを決めていく。日本人は特に季節の移り変わりに敏感な民族で、四季ごとの行事をとても大切にする。日脚の変化、肌に触れる風の温度の変化で時季を感じる。その繊細な感覚が多くの芸術を生み、巧みな技術を育ててもきた。
 きょう21日は冬至。太陽の南中高度が最も低く、一年中で一番昼の短い日とされる。この日にカボチャを食べる風習は全国各地にあるという。風邪をひかない、長生きする、お金に困らない、厄除け等々、伝えられる効能はさまざま。栄養満点で日持ちのするカボチャを保存しておき、野菜の少ない冬に食べるようにしたことから始まるともいわれるようだ。季節的なイベントは食べ物と関連していると定着しやすい。食は人の「生」の原点なのだから。
 「一陽来復」という言葉がある。陰が極まれば陽がきざすとして、悪いことが出尽くしたあといい方に転じることをいう。冬が終わり春が来ること、新年が来ることをもいうそうだ。最も昼の短い日を過ぎればあとは日が長くなるばかり。最も寒い時期を過ぎればあとは暖かくなるばかり。筆者の好きな言葉の一つだ。
 残り少なくなった暦に過ぎた日々の彩りを思い、まだ無色透明な未来の日々を思う。陽のきざしを念じながら。
       (里)

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