加害者にならないために

 「解剖を終えて戻ってきた圭司の体は氷のように冷たくなっていた」「自分たちの手は温かい、それが生きているということ」。先日、紀央館高校で開かれた、おかやま犯罪被害者サポートファミリーズの市原千代子さんの講演には胸を打たれた。集団暴行事件で息子を亡くした母の辛さ、やるせなさがひしひしと伝わり、子を持つ親の一人として胸に突き刺さった。朝元気だった最愛の息子が突然息を引き取る、この悲しみは想像もできない。もし自分が同じ立場だったらと思うと、冷静ではいられない。
 印象に残っているのは、「被害者になることは避けられないかもしれないが、加害者になることは避けられる」という言葉。人に暴力を振るったり、車のハンドルを握って事故を起こす、これは自分の心がけ一つで防ぐことができる。事件の被害者であるからこそ、加害者になってほしくない、そんな思いが詰まった言葉だと感じると同時に、自分も気をつけなければとの思いを強くした。交通事故は起こそうと思って運転している人はいないが、結果的に加害者になることがある。そんな危険が常に隣り合わせにある、運転者としての責任をあらためて自覚させられた。
 いじめによる自殺が社会問題となっているいま、自分の命、他人の命の尊さを考える機会を与えてくれた講演だった。高校生の心にも響いたことだろう。何気ない言葉が知らないうちに他人をキズつける。人を思いやる気持ちを忘れたとき、人は加害者になってしまう。自分がされて嫌なことは人にしない、いまこそ原点に戻る必要があることを感じさせられた。自分が加害者にならないために、市原さんの教えを胸に刻もう。 (片)

関連記事

フォトニュース

  1. がんばりまっしょい!

戦争体験者に聞く 終わらざる夏

  1. 出撃直前、さくら弾機が炎上 極秘扱いで「知られざる特攻機」とも呼ばれたさくら弾機は、直径1・6㍍、…
  2. 飛行機乗りが夢だった 1944年(昭和19)6月、日本はマリアナ沖海戦に敗れてサイパンが陥落し、絶…
  3. 激戦のフィリピンで6年 日米開戦直後の1941年(昭和16)12月22日、日本は米軍の支配下にあっ…
  4. 空襲に怯え、悲痛な思い 大戦末期、空襲に怯え、悲痛な思いをした御坊市島の竹田(旧姓=山﨑)玉枝さん…
  5. 根室空襲、艦載機が猛爆 大東亜戦争末期、制海権を失った日本は北海道まで米軍に押し込まれ、1945年…

日高地方などのイベント情報

現在予定されているイベントはありません。

Twitter

書籍レビュー

  1.  元アニメーターで江戸川乱歩賞作家、真保裕一の「行こう!」シリーズ最新作。今年5月に文庫化されました…
  2.  今回紹介するのは2005年に発行された推理小説家石持浅海の「君の望む死に方」。前作の「扉は閉ざされ…
  3.  映画「ソワレ」が御坊でも好評上映中ですが、タイトルは「夜会」を意味する言葉。そんなタイトルの司馬遼…
  4.  主演ドラマ「半沢直樹」の新シリーズが大ブレイク中の俳優、堺雅人。テレビ雑誌で連載したエッセイ集をご…
  5.  霊感はさほど強くないはずだが、なぜか奇妙な出来事に遭遇してしまう。本作はノンフィクション作家の著者…
ページ上部へ戻る