犯罪被害者支援の視点を

 尼崎の事件のせいか、連日、暗いニュースが目につく。現場が同じ和歌山なら体感温度もかなり違うが、ほとんどは縁もゆかりもない土地の出来事。その先に被害者の気持ちをじっくり考えることは少ない。
 地裁判決で元大学生の被告に無期懲役が言い渡された熊本の女児殺害事件。被告はスーパーのトイレで女の子にわいせつな行為のうえ、首を絞めて殺し、遺体を排水路に捨てた。求刑通りの判決に、両親は「できるだけのことはやった」と言葉を絞り出したが、隠しきれぬ怒りと無念は画面、紙面からも痛いほど伝わる。
 法務省が刑務所の民間委託を拡大するという。三食が保障され、職業技能を身につけ、娯楽もある塀の中。「規則正しい生活をする職業訓練校」との揶もあるが、他者をいたわる心を育むため、「盲導犬を飼育する教育を導入するなど民間の発想を取り入れることが受刑者の更生につながる」 という民間委託の考えをみても、更生保護と被害者支援のバランスに疑問をぬぐえない。
 被害者は、刑事裁判で被告が有罪となっても納得できない。その後の民事裁判も時間と金をかけて一からやり直し、当然勝訴しても、賠償金が満額支払われることはほとんどない。ようするに被害者はやられ損、心身ともに重い後遺症に苦しみ、泣き寝入りしているのが実態である。
 国内では一日にざっと6万人が刑務所で作業を行っているが、木彫り民芸品などいくら作っても儲けにならない。この大きな労働力をムダなく民間企業に貢献させ、働いた分の賃金から被害者への賠償金を天引きせよ。ある法学者の主張だが、被害者支援の点からも、民間委託にはこの程度の議論が必要では。 (静)

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