文楽は文化の絶滅危惧種

 近未来SF映画『プロメテウス』。人類の起源を探るミッション、未知の惑星のSFXは見ごたえ十分、宇宙船や未来の調査機器はどれもいちいちスタイリッシュで、『エイリアン』の前日譚として、3Dでなくとも大満足だった。
 映画といえば、御坊には昭和30年代まで、老松座、日吉座、中央劇場、グランド劇場と4つも映画館があった。テレビが普及するまでは映画が娯楽の頂点。マンガ祭り、健さん、寅さん、黒沢明…それぞれの世代が劇場に足を運んで銀幕のスターに胸躍らせた。
 娯楽といえば、映画の前は、御坊でも文楽が盛んだった。かつての日吉座も前身は芝居小屋で、旅館や学校の講堂で地元の太夫らが活躍していたという。ユネスコ無形文化遺産となり、興味のない人にはなんとなく敷居が高いイメージもあるが、昔の御坊の様子を聞いてあらためて、文楽とは本来、落語や歌舞伎と同じ庶民の娯楽、大衆の文化だったのだと認識した。
 文楽といえば、橋下大阪市長の補助金問題。橋下市長は文楽だけでなく、営業努力のない公務員体質、競争原理が働かない教育に真っ向持論を展開し、改革への議論を起こしてきた。たしかに、伝統芸能は格式が高いほどにつまらなく、大衆の支持がないために補助金に頼らざるを得ず、それが当たり前になっている現状に対する怒りは理解できる。
 文楽も映画もテレビも、遺伝子の多様性を持って姿形を変えていかねば、時代の流れに合わせて生き残っていけない。文楽などの古典芸能はある意味、文化の絶滅危惧種で、狭小な生息環境を守ってやらねば絶滅してしまう。AKBや三谷幸喜と同列にはいかないだろう。  (静)

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