地震体験者の話を聴かせて

 災害の恐ろしさを知り、防災意識を高めるのに最も効果があるのは、体験者の話を聴くことだろう。災害ではないが、戦争体験者の取材を通じ、戦争を知らない筆者も悲惨さ、過酷さを感じることができたのと同じことだ。防災に詳しい方々の講演を聴くことは結構あるが、体験者の言葉に耳を傾ける機会は少ない。昭和21年12月21日に発生した昭和南海地震、和歌山県内では死者269人などの資料や写真は残っているが、自分が住んでいる所では津波がどんなふうに襲ってきたのか、知っている若者は少ないのではないだろうか。
 同じく昭和南海地震で大きな被害を受けた高知県須崎市が、体験した当時の子ども107人の作文集が見つかったことから復刻したところ、著作権法にふれるとの指摘を受け、配布を取りやめなければならない事態となった。当時の鮮明な記憶を記した文集は、66年たっても多くの地域住民の心に津波の恐ろしさを伝えるはずだっただろう。住民の防災意識を高め、もしものときは人を救うかもしれない文集。ただ、同市はあきらめておらず、著作権法をクリアする方法を考えているということなので、なんとか頑張ってほしいと心から祈っている。
 9月1日は防災の日。10万5000人余りの死者・行方不明者を出した1923年の関東大震災から89年となる。機会あるごとに過去の災害を知り、教訓にして今後に語り継いでいくのは、いま生きている我々の使命である。戦争体験者同様、昭和南海地震の経験者も高齢化している。将来、地域防災リーダーになるであろう小中学生たちが、体験者の話を聴く機会を増やしてはどうだろう。      (片)

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