1本の筆でつないだ心

 日高川町の日高川交流センターで、 子どもたちの「リレー書道」作品が展示されている。同町高津尾、大前書院(大前彩雨さん指導)で書を学ぶ子どもたちが、 1本の筆をバトンのように次々に渡しながらみんなで書き上げた大作だ
 ◆取材担当ではないが、 他の用事でセンターに行った時に鑑賞した。 題材は宮沢賢治の 「雨ニモマケズ」 と 「風の又三郎」。 感動したのは、 それぞれ10人以上で少しずつ書いた作品でありながら、 立派に一つのトーンに貫かれていること。「雨ニモマケズ」 は力強く 「風の又三郎」 は伸びやかだった。 皆で書くとどうしても 「バラバラ感」 が出そうなものだが、 作品の心を皆でつかみ、 さらに 「皆で一つのものを完成させるんだ」 という気迫で臨んだからこそだろう。 見事な統一感であった。 もちろん、 厳密には一つ一つの文字に個性がある。 だがそれが全体で調和している点がいい
 ◆ 「雨ニモマケズ」 は発表するつもりで書かれた詩ではなく、 死後発見されたノートにあったものだった。 それだけに、 賢治の心の核が垣間見える作品であるように思う。 物事を真っすぐ受け止める子どもたちの柔軟な心はそれをダイレクトに捉え、みんなで一生懸命読み込んだからこそその感覚を共有できたのだろう。 そして、「みんなで書くのだから失敗できない」という「調和」への意志があった
 
 ◆一人一人が思いきり自分を表現することこそ芸術の本質だと思うが、 違う個性同士が調和を目指して初めて生まれる美もある。 今回目の当たりにした作品に新鮮な感動をもらった
 ◆一緒に展示されているリレー書道以外の作品も見ごたえがあった。展示期間は、17~19日を除く25日まで。 (里)

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