水害文集「絆」に思う

 本紙文芸欄にこのほどから掲載している日高川町校長会発行の文集「絆」は、各小中学校等の定期刊行の文集とはかなり趣が異なる。昨年の今頃は、こんな文集ができる予定はまったくなかった。平成23年9月4日、台風12号の豪雨による水害に見舞われた日高川町の子どもたちが当時の見聞や体験を自分の言葉でつづった、貴重な記録集である
 ◆平穏な生活の基盤が、自然の猛威の前に突然危うくなる。その不安と恐怖。玄関を開けるといきなり川が見えた時の衝撃や、住み慣れた自宅の変わり果てた有様を目の当たりにした驚き、混乱。かわいがっていた動物を避難先に連れて出られなかった悲しみ。子ども達の言葉は、素朴でストレートな表現だけに直接胸に迫ってくる
 ◆読んでいて心が温かくなるのは、周囲の人達の懸命の助け、駆けつけてくれた友人の存在に対して、涙がこぼれるほどの感謝や衝撃を忘れるほどの明るい笑いが自然と湧き起こってくる様子だった。地域の人々を心配して様子を見に駆け回る両親を誇らしく思う気持ちもつづられている。突然の出来事だからこそ、今まで気づかなかった大事なものの存在をしっかりと心に刻むこともできた。寄せられた文からは、衝撃的な体験にも負けず成長しようとするしなやかな生き生きとした子ども達の心が感じられる。それも周りの大人達の大きな愛情と支えがあればこそだろう。「絆」という題に、あらためて感銘を覚える
 ◆大きなショックを受けた時に心のよりどころとなるのは、同様の体験をした人の言葉ではないだろうか。自分一人だけではない、と思っただけで、前へ進む力が湧く。36人の言葉は、多くの人にとって力になる。
       (里)

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