伝説引き継ぐ住民の人情

 5月5日は端午の節句。 日高地方でも男の子の成長を願い、 各地で元気に泳ぐこいのぼりが揚げられ始めている。 この風習の由来をネットで調べてみると、 「中国の黄河の急流にある竜門と呼ばれる滝を多くの魚が登ろうと試みたが、 コイだけが登り切って竜になることができたという。 このことにちなみ、 コイが出世の象徴とされ、 端午の節句にこいのぼりが揚げられるようになった」 と書かれていた。
 もちろん全国的な祝い事だが、 みなべ町の堺地区に限っては昔からこいのぼりを揚げないという風習が残っている。 その理由は、 地元に残っている平家伝説。 平安時代後期、 壇ノ浦の戦いで平家が敗れ、 落ち武者が堺にも落ちのびたという。 正体を隠して農家に住み込み、 畑仕事に励んでいたが、 ある年の5月に京都に住んでいた頃を思い出し、 地元の男の子の幸福を願って平家の印の赤いのぼりを立てた。 すると、 源氏の追っ手の乗った船に見つかり、 落ち武者たちは捕らえられて皆殺しにされた。 住民らは 「のぼりを揚げなければ平家たちは殺されなかった。 供養する意味でものぼりを揚げるのはやめよう」 とし、 それ以来こいのぼりが揚げられていないという。
 伝説は約800年前に遡り、 真実かどうかいまとなっては分からない。 しかし、 古きしきたりを守り続ける人々には清らかな心、 先人を敬う気持ちを感じる。 世の中には変化させなければならないことと、 変えてはならないことがある。 堺地区でこいのぼりが見られない光景は、 地元住民の昔から変わることのないやさしい人情が引き継がれているという証でもある。  (雄)

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