言葉の歴史の奥深さ

 母は白浜町富田の出身である。当日高地方では聞き慣れない言葉が時折飛び出す。先日もせき込んだあと「たごったらしんどいわ」と言う。痰がからむ湿ったせきを「たごる」というそうだ。長年完全に日高の言葉を話していたが、年をとると若い頃の言葉が蘇るのだろうか◆今月3~10日付の本紙文芸欄で御坊文化財研究会の機関誌「あかね」第33号、小路順氏の「紀州日高・竜神のよく話される語と語尾」を紹介。小路氏がまとめられた方言と意味を表にして掲載した。読者の方からご好評をいただき、「切り抜いて保存している」「見逃した日の新聞がほしい」等の声が寄せられた◆テレビ等の影響で、方言は急速に消えつつある。筆者も幼少時は耳にしたのに最近聞かなくなった言葉をこの表で幾つも目にし、懐かしかった。かしん(菓子)、つくもる(腰を浮かせて半座り)、ちちろこ(松かさ)、おつる(落ちる)、にってんぼうし(直射日光を受ける)など◆和歌山弁全体の特徴は、ザ行とダ行の区別がない、関西に共通する「~はる」等の敬語がない、7時を「しちじ」でなく「ななじ」という等いろいろあるが、さらに細かく地方ごとに独自の言語体系がある。小路氏の文では、単語ごとに地域を経由しての変化の経緯が推察されていた。言葉の歴史は土地の歴史をも表す◆ネットで「たごる」を調べると「土佐・伊予弁で 『せきをする』 」とあり、驚いた。昔から四国と紀州藩は海を越えて交流があったようだが、ここにも何らかの歴史を探る糸口があるかもしれない。ちなみに日本の方言の中で敬語がないのは紀州弁と土佐弁だけという。言葉とは意外なほど奥深い背景を含むようだ。調査に情熱を燃やす人が多いのも分かる気がする。      (里)

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