自分の命は自分で守る
- 2012/2/11
- 日高春秋
東日本大震災が起きて11カ月、もうすぐ1年を迎える。先日、防災教育についての講演があり、群馬大学大学院工学研究科、片田敏孝教授のありがたい話を聞くことができた。
東日本大震災の津波による死者・行方不明者が1000人を超す岩手県釜石市で、小中学生2921人が津波から逃れた。学校にいなかった5人が犠牲となったが、99・8%の生存率は「釜石の奇跡」と言われている。学校の管理下にあった児童生徒に限らず下校していた子どもも多くが自分で判断し、片田さんが長年にわたって伝えてきた避難3原則を守って行動。奇跡という言葉が適当ではない気がする。
震災当日、中学生たちが地震後すぐに「津波が来るぞ」と叫びながら避難場所へと走ったという。その中学校はハザードマップでは津波の「想定外」。同校に隣接する小学校でも屋上に避難しようとしていた児童たちが逃げる中学生の姿を見て後ろを追い、一緒に避難場所の老人介護施設へ向かった。これだけでも大した話だが、ここからがまだすごい。子どもたちは「ここも危ない」と判断してさらに高台へ。中学生が小学生の手を引き、お年寄りに手を貸した。また、別のところでは小学生の孫が、「大丈夫じゃ」という祖父に泣きつき、説得。九死に一生を得たという。
ハザードマップや「世界一の堤防」を過信した多くの大人が亡くなっている。大人が避難せず死ぬのは自己責任だろうが、子どもが逃げなくていいという考えを持つのは大人の責任。和歌山でも近い将来大津波が襲来すると予想されている。感覚として行政依存が強い傾向にある大人たちは生き抜くことはできるか。もう一度、何度でも「自分の命は自分で守る」という意識を持とう。 (笑)