花が示す2つの視点

 「年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず」という有名な言葉が、唐詩の一節にある。1年ごとに同じ姿を見せる花。1年ごとに変わっていく人。悠久の自然と、人の世の無常を対比させた言葉だという◆この言葉を思い出したのは、山の斜面や道端などを埋め尽くす勢いで咲くタカサゴユリを見てのこと。昨年は影をひそめていたが、一昨年の今頃もやはり目を見張る繁殖ぶりだった。その頃、平成21年8月31日付の本欄にもこの花のことを書いた。「目覚ましいほどの繁殖だが、大量に咲いたあとぱったり咲かなくなることがある」、そして「人間は心がけ次第で時分の花(勢いのある時の輝き)をまことの花(真の輝き)に変えて咲かせ続けることもできる」と。この発行日は衆議院議員選挙の投票日。全国で民主党が飛躍的に議席を増やし、初めて政権与党の座に就いた時のことだ◆ことしも2年前と同じく至る所で咲き誇るタカサゴユリだが、人間の世界は2年で大きく様相が変わった。未曾有の大災害のつめ跡は、今後長期的に社会に影響を及ぼす。国難に向き合うべき政権与党は迷走が続き、いまはリーダーの椅子が最大の関心事となっている◆花は確かに毎年同じような姿で咲くが、それは同じ個体ではない。つぼみから花を咲かせ、散り、結実するまでのサイクルを花は短時間で終える。しかし人の成長や変化には、もっと緩やかで大きなサイクルを必要とする◆今目の前にあることに向き合う視点、長い目で状況の変化を考えて対応する視点。人はその2種類のスケールの目を心に持つ必要があるが、今の社会状況では特にそれが求められる。繁栄と凋落を繰り返す白い花の群れは、それを象徴するかにも見える。    (里)

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