一期一会の思い出を胸に

 以前、よく通っていた喫茶店。店内に入るとテリアが出迎えてくれ、あまりのかわいさにほっこりとした気分。客同士も顔なじみで会話を楽しみ、年配客のスポーツのにわか解説者ぶりには爆笑させられたものだ。そんな癒やしと楽しさを与えてくれた場は、いまはない。店が閉まって以来、そんな人たちともなかなか会えなくなった。
 20年前、「かんぱ~い」という飲食店がオープンした。筆者が最初に訪れたのは、開店5年目ごろで以来、年に数回行く程度だったが、店主が近所の人で娘も学生のころの後輩だったことなどで当初から親しみがあり、次第に足を運ぶようになり、5年ほど前からは頻繁に。店内では年齢も仕事もさまざまな人たちが世間話や身の上話、趣味の話などで会話に花を咲かせ、たわいもない話で大笑いすることもあれば、意見が衝突してけんかとなることも。身の上話で涙を流す人もよく見かけた。筆者も何かと相談に乗ってもらい、記者として日高地方の情勢や裏話など貴重な情報を集める場でもあった。
 そんな大切な場も今月からなくなった。店主が還暦を迎え、開店20年を機に店を閉めることを決めた。閉店後の今月2日にはささやかながらも常連客らでお別れ会を開き、思い出話で20年間の出来事を懐かしむ一方、うたで盛り上がり、この店らしく笑いあり、涙ありで幕を閉じた。寂しいことだが、喫茶店と同様に集いの場がなくなれば、顔を合わす機会が減るのは致し方のないこと。めっきり会えなくなる人もいるだろう。多くの思い出と出会いをくれた店に感謝し、その思い出を深く胸に刻み込むとともに、例え会うことが少なくなってもここで出会った人たちとのつながりはずっと大切にしていきたい。  (昌)

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