心に光る歌ひとつ

 ある大学の入試期間、正門近くの喫茶店に毎朝必ず立ち寄った。4日間、いつも30分ほど。初めの日は、不安と緊張感でいっぱい。そのくせジタバタしても仕方がないと参考書は開かないと決めていたが、頭の中では英単語が次々と浮かび、答えを導き出すという繰り返し。そんなメビウスの輪のような状態から救ってくれたのが、店内で流れた一曲の歌だった。曲名は森高千里の「雨」。何ともいえない心地よいメロディーで、不思議と心が落ち着き、不安がなくなっていた。2日目以降も店内では決まった時間にこの曲が流れ、試験の際も曲が頭の中でめぐった。最終日、店の人が「合格を願っています。4月に会えればいいですね」と一言。4年間、行きつけの店となった。そんな思い出が詰まったこの曲が筆者の心に光る歌である。
 本紙毎週木曜付10面のコーナー「心に光る歌ひとつ」は筆者を含め2人の記者が担当。最近では「スマイル」や「それが大事」等の曲にまつわる読者の皆さんのエピソードを紹介したが、学生時代の思い出をはじめ、励まされたことや子どもたちの成長に涙が止まらなかったことなど心温まるものばかり。コーナーの取材は楽しい仕事の一つだ。
 筆者の「雨」は、多くの好きな歌の中から選んだ曲だが、思い返しているうちにその頃にフラッシュバック。歌は、忘れていた当時の自分や情景を思い出させてくれるとともに、メロディーは聴く者の心に染みわたり、歌詞は深く語りかけ、勇気と元気を与えてくれる。初心に帰らせてくれることもある。コーナーの取材を通じてあらためて歌の素晴らしさを感じている。読者の皆さんの心に光る歌は何ですか。一度、考えてみてください。ほっこりした気分になれると思います。   (昌)

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