シリーズ 「うつ病」 ④  杉村さんの場合その3

20109017-1.jpg いまから5年ほど前、精神科でうつ病との診断を受け、自宅で服薬と休養の療養生活に入った杉村三郎さん(37)=仮名=。当初、薬を飲んでも症状はよくならず、表情は死んだように感情がなくなり、一時は心身の苦痛に耐えかね、「生きててもしゃあない」と自殺願望が頭をもたげた。「ゆっくりさんせよ」という家族や友人に支えられ、医師の言葉を信じて1年以上、薬を飲み続けるうち、薄皮をはぐように症状が落ち着きをみせはじめた。
 ■気にかけてくれた友達 「気晴らしにどっか行かへんか」。暗く閉め切った部屋の中でゴロゴロ、寝てばかりの自宅療養中、友達の中山さん(仮名)がちょくちょく電話をかけてきた。中山さんは高校時代からの親友で、社会人となってからも付き合いがあり、ちょうど杉村さんが落ち込みはじめたころは、自分自身も大病を乗り越えたばかりだったが、うっとうしくない程度に2週間から3週間に1回の間隔で電話をかけてきたり、携帯メールを送ってきた。杉村さんはそのたび、「ごめん、いまは外へ出たくないんや」「人に会いたくない」と断り続けていたが、中山さんは見捨てることなく粘り強く電話をくれた。半年ぐらいは薬がまったく効かず、1年近くが過ぎたころ、ようやく薬が体に合いはじめたのか、少しずつ眠れるようになり、食欲が戻り、外出してみようという能動的な意識が出てきた。
 
 ■尊敬する先輩の言葉 中山さんだけでなく、大阪にいる友達や同じ仕事をしている先輩も電話をくれた。先輩は自分と同じような経験、辛い思いをしたという話は前から知っていた。「とにかくいまは休む時期なんやから、なんにも考えやんと、ゆっくり休んだらええんやで」。薬が少しずつ効き始めたのに加え、尊敬する先輩の優しい言葉、それに親友たちの励ましが回復への小さなターボとなった。外出できる時間帯が夕方、さらに昼間に近づき、母親の畑仕事を手伝うほどにまで回復してきたころ、「ええとこあるから1回行こら」と中山さんが誘ってくれた山の中のログハウスに出かけた。
 ■雑音のない世界でのんびり 車の助手席に乗せてもらって、自宅から1時間ほど南へ。山の中にあるログハウスは、中山さんの知り合いの別荘で、思ってた以上に気分がよく、落ち着けた。緑に囲まれ、目の前には小さな川が流れ、聞こえるのは川のせせらぎと鳥の声だけ。真夏ではなかったが、暖かい季節。「風もさわやかで、本当に体の力が抜けるような感じでした」。途中で買ってきた食材で中山さんが簡単なチャーハンを作り、2人でそれを食べ、中山さんは好きなだけビールを飲み、下戸の杉村さんは庭に寝ころびひたすら眠った。静かな2人だけの世界、会話はほとんどなかったが、必要もなかった。1晩泊まって家に戻ると、「また行きたい」と思った。

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