シリーズ「田舎暮らし」④ 日高川町の安大さん

20105021-1.jpg 緑の山に囲まれ、水清らかな日高川が流れる日高川町の中津地区には京阪神から多くの人が移住しており、11年前から田尻で天然酵母のパンの店 「こむぎっ子」 を開いている安大さん一家も、静かで美しい自然に魅せられてIターンを決意した。店はこのほど増築工事が終わり、6月からは新たに喫茶コーナーがスタート。田舎にとけこみ、夫婦で切り盛りする人気の店を訪ねた。
 大阪府交野市出身の孝夫さん (49) と妻豊子さん (48) が交野から日高川 (旧中津村) へ引っ越してきたのはいまから17年前の平成5年。 アトピー性皮膚炎だった長女の転地療養の意味もあって、 「どこか環境のいいところがあれば…」 と田舎暮らしを考えていたところ、 現在も活動が続く民間のなかつ村移住推進協議会の取り組みを紹介したテレビを 「たまたま見た」 のがきっかけだった。 「それまで和歌山は白浜ぐらいしか行ったことがなかったし、 具体的に和歌山への移住を考えていたわけでもなかった。 とりあえずどんなところなのか、 遊びがてら一度行ってみよう」 と、 1泊2日で家族で訪問。 協議会会長の上平裕一さんに村内をあちこち案内してもらい、 その後の2回目の訪問で現在の土地を紹介され、 「子どもの学校が近く、 なにより自然が素晴らしく気に入った」 という。
  
20105021-2.jpg 田尻に住み始め、 パンを焼いたりケーキを作るのが趣味だった豊子さんは、 本格的に天然酵母のパン作りを勉強。 忙しい主婦の時間の合間に本を読んで研究し、 引っ越しから6年後の平成11年9月、 自宅前のログハウスで念願のパンの店 「こむぎっ子」 をオープンした。 原料は主に北海道産の小麦を使い、 同じ町内のIターン組で有機農業に取り組む人から仕入れる無農薬小麦は全粒粉として使用。 その他、 還元水、 自然塩、 粗糖、 放し飼い自然卵など天然素材にこだわり、 生地に油脂や卵、 乳製品を使わない 「こむぎっち」 シリーズ (一番人気はイチジクとクルミ入り)、 自家製のあんやクリームを使った 「田舎あんぱん」 「クリームひめ」 など常時十数種類を販売。 毎週土日には船津の産品販売所でも販売している。
 孝夫さんは移住前は寝屋川養護学校の教諭で、 田尻へ来てからも転勤した泉佐野養護学校まで電車で通勤。 家から車で広川駅まで行き、 日根野駅から学校までは自転車という毎日が続き、 「片道3時間ぐらいかけて通ってましたけど、 さすがにしんどくなって、 1年後からは車で通いました」 と振り返るが、 いまから6年前に退職。 豊子さんに一からパン作りを習い、 夫婦二人三脚で店を切り盛りしながら、 毎週1回、 教員時代のつながりで買ってくれる大阪の友人や知人に配達し、 町内の小学校や保育所にも定期的に給食用のパンを配達している。
 工房も兼ねる店は商品を並べるだけでいっぱい、「遠くからわざわざ買いに来てくれた人とも立ち話しかできない」ほど狭かったが、ことしに入って待望のカフェスペースを増築。窓に面したカウンターとウッドテーブルで8人まで座ることができ、豊子さんは「カフェは基本的に予約制ですが、ゆっくりくつろいでもらえます。また、パンやケーキ作りのサークル(オレンジの会)も主宰していますので、教室や交流の場として充実させていければ」と笑顔。次回の教室は6月13日午後2時からピザ作りを紹介する。
  「こちらに来て、しばらくは山や空の色、星空の美しさに感動の連続でした。地元の方もオープンな方ばかりですし、子どもたちも祭りに喜んで参加するなど、いまでは都会に行くと『早く中津へ帰りたい』と思うようになりました」と、すっかり日高川人な安大さん一家。この移住の成功の裏には、地域や人とのつながりをつくることに労を惜しまない上平さんら民間団体、行政の力も大きかったという。

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