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「進撃の巨人」25巻(諌山創著、講談社)。

 もう...凄いです。

 凄すぎて、何から書いていいやらですが。

 表紙絵がすでに激動の展開を示唆し、読み始める前から心臓の高鳴る感じ。

 4年後のエレンと、4年後のライナーとがついに出会ってしまった前巻のラスト。
 プロローグのように挿入される、ライナーの回想。
 ベルトルトの言葉。

「あのおじさんは誰かに...
 裁いてほしかったんじゃないかな」

 その言葉を頭の中に響かせるライナーの眼前に。
 その存在自体で彼の罪を告発する男、エレン・イェーガーがいる。

 悪夢の具現のように。
 
 第99話「疚しき影」 
 第100話「宣戦布告」
 第101話「戦鎚の巨人」
 第102話「後の祭り」

 物語が劇的に動くのは第101話「戦鎚の巨人」からなのですが。

 第100話「宣戦布告」でのライナーとエレンの対話に、この物語自身の本質的なテーマが現出しています。
 それは人間社会――複数の集団がかかわりを持ち合った時の人間社会における、根源的な、本質的な問題でもあるかもしれません。

「なぜだ? ライナー
 何で母さんはあの日 巨人に食われた?」
「...それは 俺達があの日...壁を破壊したからだ...」
「なぜ壁を破壊した?」
「...任務に従い 混乱に乗じて壁内に侵入し...
 壁の王の出方を窺うために...」
「その任務とは?」
「...始祖を奪還し 世界を救うことが目的...だった...」
「...そうか 世界を救うためか...
 
 世界を救うためだったら そりゃあ

 仕方ないよなぁ...」

 エレンにとって、少年時代の行動原理のすべてだった一つの事実。

「母さんが巨人に食われた」

 その事態を引き起こした当の本人に、このうえなくシンプルな言葉で理由を問いただす。

 しかし今のエレンの目に、少年時に消えることのなかった熱い「怒り」はない。

 ただ、訪れる宿命を静かに眺める者の持つ、限りない「悲しみ」と無力感がたたえられているかに思える。

「...一体何ができたよ 子供だったお前が その環境と歴史を相手に
 なぁ...? ライナー お前...ずっと苦しかっただろ?」
 
 そして、そんなエレンに見つめられるライナーは。

「違う!!」

 椅子を倒し、床に身を投げ出すようにうつむき叫ぶ。

「俺は...俺は英雄になりたかった!!

 あれは...時代や環境のせいじゃなくて...
 俺が悪いんだよ

 お前の母親が巨人に食われたのは俺のせいだ!!」

 その眼には、罪の自覚に自己をさいなむ者の熱い涙がある。

 今のエレンの心には。
 少年時から抱き続けた噴き上げるような熱い怒りと引き換えに、敵だった存在への人間としての理解が生まれている。

 しかし。
 「だから彼等を快く許してやり、手を取り合う」などという心境では断じてない。
 そんなとってつけたような心の動きができるわけはない。
 失ったものはあまりにも重く、傷の痛みは永遠に消えない。
 相手にも同じ痛みがあるのだと分かった今も、なお。
 人間の感情はそんなに簡単ではない。
 だからこそ、人間の世界は...

 ヴィリー・タイバーの演説が、彼等の耳には聞こえている。

「...ですが 私は死にたくありません
 それは... 私がこの世に生まれてきてしまったからです」

 あまりにも率直な、人間としての根源的な言葉。
 この時エレンの目に宿った表情は、はからずも生まれた彼への共感なのか...。
 だが、しかし。

「パラディ島の悪魔と!!
 共に戦ってほしい!!」

 続くヴィリーの叫びに、エレンの目は限りない悲しみとある種の諦念を湛える...。
 (このエレンの表情の絵は凄いと思う)

 一見静かな表情のまま、エレンは膝をついていたライナーに手を差し伸べ、立たせる。
 だがその口から出る言葉は。

「やっぱり俺は...お前と同じだ

 多分...生まれた時からこうなんだ

 俺は進み続ける

 (何かを諦めたような表情)

 敵を駆逐するまで」

  次の瞬間

  ライナーと合わせた掌から、鋭く轟くような波動が起こる。

  その眼は異様に光り...

  髪がうねりながら伸びていき...

    「宣戦布告する!!」

  と舞台上で高らかに叫ぶヴィリー・タイバーと、あたかも呼吸を合わせるかのように。

  その頭上に。

  まるで戯画化された彼の巨大像のように、同じ動き、同じ姿勢で...

  エレン・イェーガー、巨人化。

  哀れ、いとも簡単に胴体をまっぷたつにされ...
 「パクッ」とエレンに喰われてしまった、ヴィリー・タイバー。

  ...ここからの展開は、もう...。
  克明に追っていくと書いても書いても終わらない。
 「静」から「動」へのこの劇的展開が与えてくれる、一種のカタルシス。
 間違いなくこの物語の醍醐味です。

 明記しておきたいのは、100話でのエレンとライナーの対話。

 この視点、この表現力を備えているからこそ。
 ...私は「進撃の巨人」を凄い作品だと断言せずにはいられないのです。

 物語を動かすのはその世界に生きる「人」で、その心を的確に表現してこそ、どのような急激な劇的展開も、説得力をもって読む者の心にびんびん響いてく

る。

 その、最も重要な「人」が。
 今巻後半では続々と現れてくれて、私達を興奮させてくれます。

 ピークとポルコの上空を飛び過ぎる、立体機動装置の一団。

 顎の巨人を襲う、リヴァイ。

 そのカッコよさはもはや問答無用。
 エレンの、

 「今だ ミカサ」

 ...には「ぞくっ」ときましたね。

 そして重要なポイント、ミカサの悲しみ。

 「もうとりかえしがつかない...」

 このミカサの悲しみは、私にとって疑問でもあります。

 なぜエレンは、「それ」をやってしまったのか...?

 ジャン、サシャ、コニーと懐かしく心を騒がせてくれる顔ぶれもそろいましたが、まだ読み手には明かされない、この襲撃の狙い。
「時間までに」という言葉が出ましたが、その「時間」とは一体何なのか?

ただ、元調査兵団の面々の硬い表情は、状況が容易ならぬことをうかがわせませす。

ついに姿を現した「戦鎚の巨人」も、いまだ謎に満ちた存在だし。

4年間で姿を消したという32隻の調査船も、私には気になる。

さらなる怒涛の展開が予測される26巻が、待ち遠しくて仕方がありませんね。


 
 

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プロフィール

サト 日高新報記者。文化関係等の取材、編集整理、連載随筆や投稿原稿の編集を担当。空いた時間が少しでもあれば、本か漫画を読まずにはいられない。料理や洗濯をしながらも、可能な限り本を手離せない真性活字中毒。常に面白い本の情報を求めています。音楽や映画、歌舞伎など舞台芸術も大好きです。ひのえうま生まれの女。

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