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 「進撃の巨人」23巻(諌山創著、講談社)。

 ストーリー的には、大きく進んだようでもあり、またある意味ではインターバル的な位置づけともいえる一冊。

 あの時。
 起死回生の勝利を得たエレン達が、ついに焦がれ続けた壁の向こうを恐怖心なしに走り、さらにその果て、岸辺に立ってはるか海の彼方をまっすぐに見つめた...

 ...あの時から。
 なんと、4年という時間が経過しています。

 それも、ここで展開されるのは、エレン達が見つめた先の大陸にある大国マーレ側から見た世界。
 正確にいうと、マーレ人の中で過酷な生を生きるエルディア人側から見た世界ですね。

 ライナーは生きていた。
 生きて、立派なおっさんになっていた(笑)。

 誰だ~?
 この表紙絵の子らとおっさんは。
 それと、見慣れないおかしな顔の巨人は。

 と思ったんですが、そのおっさんがライナーだとは。

 10代から20代への4年は大きい。
 エレン達の外見がどう変わっているのか。
 わ~早く見たいな、と思いつつも、この巻ではまったく登場しません。

 人類と巨人との最終戦争(かと思われた)19巻から22巻までは、ストーリーの本道を適正なる猛スピードでぐおんぐおんと驀進していった感がありましたが。
 ここへ来て、視点の変換とともに、物語の進行は適正なるスローペースに移りました。
 緩急のメリハリは物語においても大切な要素。
 主人公側が登場しないという意味でインターバル的な章である今巻は、隅から隅までじっくりと人物の行動やセリフをチェックし、その意味合いを深く考えながらゆっくり読み進むのが、この壮大な話への正しいアプローチと思われます。
 「進撃」では珍しいハイテンションキャラのガビたち戦士候補生をはじめとする、マーレ(の中のエルディア人達)の新キャラに頭をなじませるためにも、丁寧に時間をかけて読んでいくべきかも。

 ...というところで、改めて重要な新事実をおさらいしてみましょう。
 順不同、というか私にとって重要な順に。

*ユミルはやはり死んでしまっていた...
 そして彼女の巨人体であった「顎(あぎと)」の巨人が、マーレ人(エルディア人?)のポルコ・ガリアードに受け継がれている(でも、そもそもそれはポルコの兄のマルセル・ガリアードの巨人体だったみたいだから...ややこしい...)。

*アッカーマン一族は、「巨人化学」の副産物!?
 ...ん?
 巨人...化学? 
 巨人の誕生は、人為的なものなのか?
「始祖の巨人」の真実もまだ、神話以上のことは不明だし...
 謎は深まるばかり。

*ジークは、自身が「王家の血を引く」ことを明かしていない。
 任期(余命)があと1年足らずだというジーク...。
 心中に何らかのはかりごとを巡らしているのか。
 彼の真意も、大きな謎の一つ。

*4足歩行の巨人が、女性だった!
 しかも結構な美人だ。なんか、とろんとしてるけど。

 新事実の詳しい考察は置いといて、印象に残った場面。

 ジークが島の説明をする中で示された、「おかしな機械をつけた連中が両手に剣や爆弾を装備して飛び回る」図。
 この流れの中で語られると、カッコよさが際立っていた。
 立体機動装置。
 今更ながら、この作品の根本的な魅力の一つですね。
 
 第93話「闇夜の列車」のラスト。

「おまえがガビを救い出すんだ
 この真っ暗な俺達の未来から...」

 彼らを乗せた列車が黙々と進む、真っ暗な闇。
 それは行く手に光を見いだせない、ライナーの心そのものなのでしょうか...。

 この辺はもう、文学的ですね。

 そしてなんといっても、情緒面でのこの巻の焦点は。

「凶悪で残虐な悪魔達の住む島に5年も潜入してどんなに辛かったか」と、ガビが無邪気な正義感でライナーを気遣った時。
 言うに言われぬ衝動に駆られて、ライナーは「いいや 話せることもある」と急にとりとめもなく語り出す。

「島の連中はまさしく悪魔で 残虐非道な奴らだったよ
 あれは軍の入隊式の最中だった
 突然芋を食い出した奴がいた(サシャ)
 教官が咎めると悪びれる様子もなく答えた うまそうだから盗んだと
 ...
 
 本当にどうしようもない奴等だった
 便所に入るなりどっちを出しに来たのか忘れるバカだったり(コニー)
 自分のことしか考えてねぇ不真面目な奴に(ジャン)
 人のことばっかり考えてるクソ真面目な奴(マルコ)
 突っ走るしか頭にねぇ奴に(エレン)
 何があってもついていく奴ら(ミカサとアルミン)
 それに...(ユミルとヒストリア達)
 色んな奴らがいて
 そこに俺達もいた(ライナー、ベルトルト、アニ)

 そこにいた日々はまさに
 地獄だった」

 2度と戻ることのできない「地獄」の日々の思い出を、ライナーは憑かれたように語り、厳しい表情で口をつぐむのだった...。
 
 この場面のライナーには、理屈抜きに心を撃ってくるものがあります。

 そして回想へと入り、読者はライナーもまたエルディア人収容所という「壁」の中で育った少年だったことを知るのです。
 エレン達だけではなく。

 こうなると25巻ぐらいでは終わりそうもないけど、それは物語が成長しているからだと思います。
 きっちりと正しいペースで描ききられることを、物語は求めている。
 適正なスピードで。

 果たして、4歳分成長した第104期生の面々を24巻では見ることができるのかどうか?
 ワクワクしますね。
 12月は遠いけど。

 

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プロフィール

サト 日高新報記者。文化関係等の取材、編集整理、連載随筆や投稿原稿の編集を担当。空いた時間が少しでもあれば、本か漫画を読まずにはいられない。料理や洗濯をしながらも、可能な限り本を手離せない真性活字中毒。常に面白い本の情報を求めています。音楽や映画、歌舞伎など舞台芸術も大好きです。ひのえうま生まれの女。

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