「弱虫ペダル」22巻(渡辺航著、秋田書店)、出ました!
あっという間に読みました!
(というか、チャンピオン本誌で読んでるので内容はすでに知ってるんですが...)
まず。
この表紙がいい!
グッときますね~久しぶりの総北3年生トリオ(8巻の裏表紙以来)。
特に、前面に立ってぐぐっと力の入った腕を見せる、人相の悪い田所さん。
このシンプルな力強さが。
この巻を物語っているといえるでしょう。
そして。
裏表紙...。
ナンバー171、乗り手不在のトレック...。
3日間のロードレース最終局面。
その過酷さが、ここへ来て次第に明らかになっていきます。
メンバー全員がそろってゴールに到達できるわけではない。
1、2位を争う強豪チームであろうと。
1日目、2日目のゴール前とは違って。
勝負の様相は、よりシンプルになっています。
駆け引きも何もなく、ただひたすらに追いつき追い越すことを期して走る。
勝った者の勝ち。
だから構造上、ここまでの各巻のような濃密なつくりにはなっていません。
展開も、ある意味シンプルです。
王者の確かな実力で。
先行し続ける箱根学園。
ゴールゾーンへの到達を待つまでもなく、
レース最大の山、その前の平坦部分で一気に総北を引き離し、
この段階で決定的に勝敗を決めてしまう。
それが彼らの期している総合優勝の青写真。
しかし。
悲願の総合優勝をつかみにかかる総北は、
それをなんとしてでも阻止しなければならない。
それには、
何がなんでもここで差をつけさせない!!
食らいつく!!
それしかない。
追いつく。
引き離す。
また追いつく。
また引き離しにかかる。
そしてまた追いつく。
極めてシンプルな、戦いの構図。
しかし...その局面は、当事者には重い。
そして、各人の心身のボルテージは最高潮に高い!!
...まあ、とりあえず。
物語を順に追ってみましょう。
箱根学園、荒北に続きチームを引いて加速し燃え尽きていく役を担うのは、2年生の熱血スプリンター、泉田・アブ・塔一郎。
荒北に教えられたチームの誇り、「シングルゼッケン」を背負って完全燃焼。
悔いはない...
「あとは... 頼みます」
掌を大きく開き、落ちていく泉田の背をグッと強く押さえてねぎらうエーススプリンター新開隼人。
「まかせとけよ!! 泉田!!」
すべてを燃やし尽くして仲間を見送る泉田。
その脳裏には、いつも飄々としていながら誰よりも強くて優しい、憧れの新開との今までの交流がよみがえってくるのだった。
そして最後の力を振り絞って叫ぶ。
「総合優勝獲ってください!! 箱根学園!!」
それはそうとして。
この場面の前、1年生トリオの鬼引きでハコガクに追いついた時。
田所が「ガハ!」と笑い、「福富!! どうだ!! これで五分だな!!」と福富の真横から挑戦的に叫ぶ。すると福富は鉄仮面のような冷静な顔で、ごし、と左頬をこすり、「加速だ ...泉田」と静かに命じる。
「ぐっ」と絶句する田所。
...この「ごし、」ってのは、田所さんが至近距離でツバ飛ばしながら叫ぶもんだから、それをぬぐってるんですね? 福富さん(笑)。
福富は心中で、総北・金城に呼びかける。
この最終局面ではセレクションをして数を減らした方が有利
極限まで身を削り 絞った方が勝つ!!
チーム6人全員では 闘う場面じゃないんだよ!!
金城!!
「極限まで身を削り 絞った方が」というところで、福富の脳裏には、最終局面序盤で自らチームを軽くするため落ちていった荒北靖友の姿が浮かんでいる。
そして今また、スプリンター泉田が落ちる。
落ちていくハコガク5番、泉田の姿を目に止めながら追い抜いていく総北。
荒北の時に、金城・田所・巻島が彼を一顧だにせず追い抜いていったのはある意味彼への礼儀だと思うんだけど、ここではライバルチームの2年生の姿を短時間だけど目に止めている。
チームは違うけど3年生としての、2年生選手へのねぎらいの気持ちも少しはあるかもしれない。
そして。
総北1年生トリオは挽回へ死に物狂いの全力疾走を誓い合い、気合を入れ合う。
が......
「下がれ 1年」
「よくやった」
ハコガクを本気で追うため、前へ出るのは3年生3人。
金城の言葉に、状況を理解する坂道。
「そ...総北は今...負けるかどうかの...危...危機的状況なんですね...」
巻島が言葉を補う。
「ロードレースじゃ ゴール前にからめるかどうかさえ
いくつもハードルがあんだ
運 実力 メンツ
人生と同じだ 常に不平等だ!!」
(ここでニイッと笑えるのが、巻島さんなんですよねー)
「だったらどうする 決まってる!!
そいつを
どうやってひっくり返すかを考えんだヨ!!」
そして。
3年生の本気が炸裂する。
もちろんこれまでもド本気だったけど、そのさらに奥の奥から「勝つ!!」という気持ちの一番芯の部分がマグマのように噴出してきて、それが形になって走っているような...。
それに圧倒されながら。
「ハコガクに最後の勝負を挑むのは3年。現時点で力の足りない自分たち3人は山の手前で切り離される」との自覚は、1年生、特に今泉&鳴子にとってはつらく、ある種屈辱的でもある。
「オレたちの背中を見届けろ」
...と言われても。
「いっそここで切り離してくれた方が」「生ゴロシや」と、失意の走りを続ける2人。
が。
素直に言われた通り、メガネの奥の大きな目に力を込め、口を半ばあけるほど集中して、3年達の背中を無心に凝視しながら走り続ける坂道の姿が、2人を変える。
「見て すごいよ こんなに全力で走る3年生を こんなに近くで見るのは 初めてだよ」
元々、優れた存在にまっすぐに憧れるという力を備えている坂道。
「今 3年生は ボクらに 強くなれって言ってる気がするんだ!!」
巻島との個人練習を、「自転車で会話する」という言葉を思い出している坂道には、3年生が背中から発するメッセージがちゃんと伝わっている。
「まわりの空気を変えちまうおかしなヤツ」(16巻)である坂道。
虚しい気持ちに陥って走っていた今泉&鳴子の目からウロコをはじき飛ばして覚醒させ、1年生トリオはあらためて3年生の背中をじっと見据えながら、今度こそ本気の走りを始めるのだった。
全員全力
それがオレたちのロードレース!!
しかし...
「6枚のジャージがそろって完成形」
の総北チームから、初めて1枚のジャージが抜ける。
「暴走の肉弾頭」田所迅。
最後の「総北名物・肉弾列車」が、いま、パワー全開で披露される。
勝利の可能性を手の中から逃さないために。
「今大会最高の山」をゴールへ駆け登る、金城&巻島を最高のポジションへ引っ張るために。
「先... 言っとくぜ」
飛び出す前に、金城に言ってニヤリと笑う田所。
「ありがとよ 3年間」
「山中湖の湖畔の最後の平坦が
スプリンターのオレにとってのゴールだ」
前夜、そう言ってニヤリと笑った田所の顔が、金城の脳裏には蘇っていた...。
...長くなってきたんで、続きは次回に。