架空通貨  池井戸潤著 講談社文庫

 銀行に7年間勤務した経験を持ち、「半沢直樹」「陸王」「ルーズヴェルト・ゲーム」など人気ドラマの原作者として知られる池井戸潤の初期の金融ミステリーを紹介します。

デビュー作「果つる底なき」で江戸川乱歩賞を受賞した翌々年、受賞第1作として発表した長編です。

物語 私立女子高校の社会科教師、辛島は、かつては商社マンで企業の信用調査を担当していたというキャリアを持つ。ある日、日本史の本を貸した受け持ちの生徒、黒沢麻紀の父が経営する会社が破綻。麻紀は、会社が社債を引き受けていた某県田神町の大手金属会社、田神亜鉛株式会社へ、期日前に金を返してくれるように単身で頼みに行ったという。辛島は麻紀の母の依頼を受け、後を追って田神町を訪れた。

そこは一歩足を踏み入れただけで、異様な雰囲気に満ちていた。「田神亜鉛」の企業城下町的な町で、誰もが社長の機嫌を損ねまいとしている。しかも町内には「田神札」という、他では通用しない奇妙な商品券が流通している…。

ビットコインのような「仮想通貨」の話かと思ったのですが、2000年刊行と20年近く前ではまだそんな時代ではありませんでした。原題は、通貨供給量を表す言葉「M1」(改題は、翌年から始まった漫才の賞「M1グランプリ」とまぎらわしいからかも…)。

実体のないものに価値がつけられ、それがビッグビジネスとなるのが現代社会。不健全な経済システムのひずみにつけこむ悪意が断罪されるまでを描く力作でした。ただ、中盤までの経済システムの説明を眉間にシワを寄せながら読んでいると、寝てしまいそうになりました。文系人間にはちょっと難しかったですが、その反動のように、クライマックスにはアクション映画のような派手な展開が待っています。

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