バベル九朔(万城目学著 角川文庫)

 「鴨川ホルモー」等、現実とファンタジー世界が融合する独特の作品世界が人気を呼んでいる、万城目学の近作をご紹介します。

 物語 「俺」は5階建ての雑居ビル「バベル九朔」の管理人。5階に住み、ビルの管理業務にいそしみながら小説を書いている。勤めていた会社を2年前に辞めて、念願の小説家になるため、亡き祖父が建て伯母が管理するビルに管理人として転がり込んだのだ。

 1~4階の個性的なテナント店主たちの世話をしながら、2年間かけて書いた長編小説もいよいよ完成。あとはタイトルをつけて文学賞に応募するだけだ。ところが、その締め切り間際、ビル内で空き巣が発生。犯人と思しき黒ずくめの「カラス女」も出現した。サングラスを外すとカラスそっくりの黒い目玉。口を開けると中は真っ黒で、「quaaa」とカラスのような奇声を発する。本当に化け物だったのだ。彼女は「大九朔」つまり「俺」の祖父と敵対しているらしく、「バベルの扉はどこ」と恐ろしい目で聞いてくる。意味がわからず逃げ出し、画廊の不思議な絵に触れた途端、この「バベル」と同じようで時空の異なるもう一つのバベルに入り込んでいた。そこから死んだはずの「大九朔」と会う旅が始まる…。

 舞台は、最初から最後まで「バベル九朔」の中。いわばクローズド・サークルですが、時空を超えて存在するビルなのですべてに開かれているともいえます。「バベル」は言語表現による世界の構築そのものを象徴しているようで、純文学として読み解くべき物語なのかもしれません。 

 同じ著者の「プリンセス・トヨトミ」のようなわかりやすい面白さはありませんが、「二十四時間営業の流しそうめん屋」とか細かなディテールはとても面白く、頭の中で克明に映像化しながら読むと楽しめます。

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