平和条約落としで一本

 北方領土返還の期待が高まる日ロ関係。安倍首相とプーチン大統領は平和条約交渉を加速させることを確認、河野外相が新たな枠組みづくりの責任者に任命されたが、河野外相は注目が大きいだけに発言は慎重にならざるを得ず、先の記者会見では記者クラブとの不和が露呈した。

 ロシアは極東の人口減少が激しく、国全体の経済も破綻寸前の状況にあるといわれる。4年前のクリミア占拠、シリアへの介入で制裁を受け、原油価格の低迷が不況に拍車をかけ、プーチン大統領自身も年金問題で支持率が急落。いま、のどから手が出るほど欲しいのは日本の投資であろう。

 日本にとっては、ロシアが最も弱っているいまこそ、領土問題を動かす最大のチャンスとなるが、領土返還を憲法改正、北朝鮮拉致被害者奪還と並ぶ政治レガシーとしたい安倍首相の前のめりが見透かされていないか。

 ロシア極東地域の国土は全体の36%と広いが、人口はわずか4%の約620万人。北方領土に暮らすロシア人は4島合わせても、約1万6000人しかいない。いまのロシアには、この人たちの生活を維持する経済的余力はない。

 先月の日ロ首脳会談後、安倍首相は「領土問題に必ず終止符を打つという強い意志を完全に共有した」と力を込めた。プーチン大統領は日ソ共同宣言の「引き渡し」の言葉の意味や根拠が云々、米軍基地の可能性にも言及するが、これらもどこまで本音なのか疑わしい。

 安倍首相の任期は残り3年を切り、米欧中と対立するプーチン大統領も内憂外患。「一本」を狙う安倍首相は4島帰属投げ、秋田犬刈り、8項目の経済協力背負いもかわされたが、とうとう奥襟をつかんだ。もう逃がすわけにはいかない。(静)

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