奇才の画家と伝統技術のコラボ

 先日御坊市民文化会館で4日間にわたって開かれた全国巡回展、西陣美術織工房主催の「若冲」展を取材した◆何年か前、全国紙の特集ページで一面に大きく写された「群鶏図」が若冲作品の見始めだった。色鮮やかで精密。なんとなく心ひかれて本などで作品を見た。鶴や鶏など鳥と植物の絵が多いが、花鳥画という言葉からイメージする優雅さよりもむしろ鋭さ、「動」をはらんだ「静」という緊迫感が感じられる。鶴は優美なようだが猛々しく強い。鶏が意外と攻撃的なことは、幼い頃に家で飼っていたのでよく知っている。そんな鳥達の生命感や力強さが、細密な絵からにじみ出る◆展示会では、その細密な絵が織物で見事に再現されていた。一見すると白い鶏の羽が、ルーペを通すと実は色とりどりの糸で織られていることが分かる。平織の一種、綴れ織りという織り方で、普通は厚みができるが、髪の毛の半分ほどの細い糸が使われているので薄くできる。当時の絵師が絶対に描かなかった「病葉(わくらば)」が描かれていること、「梅花群鶴図」では鶴の見た目の数よりも足の数が多いことなど、若冲という人物の自由な感覚や遊び心もその場で解説された◆1点の作品を制作するには、準備に1年、実際の作業に2カ月を費やすという。これまでにもさまざまな企画で作品を生み出しており、瀬戸内寂聴さんの色紙絵と言葉を織り出した作、観音菩薩の姿が浮かびあがっているという那智の滝、松本零士の80歳を祝った「銀河鉄道999」のメーテルも会場を彩った◆精密な手仕事、繊細な表現技術。細やかさは日本人の本領である。そこに閃くような「何か」、創造性や遊び心が込められた時、緻密なだけではない、独自の生命を持った芸術として生き始める。(里)

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