東国原氏の講演を聴いて

 お笑い芸人になりたいと願う人、政治家を志す人は数多いかもしれないが、その両方を夢みてしかも実現してしまった人となると、極めて珍しい存在ではないだろうか。先日の市民教養講座講師の東国原英夫さんは元たけし軍団の一員であり、元宮崎県知事。講演の前半はお笑い芸人、後半は知事としての経験を語った◆大学卒業後お笑い芸人を志す。小学校の卒業文集で「芸人と政治家になりたい」と書いた、12歳の自分との約束を守りたかったからだという。浅草で人気が出る前のビートたけしさんの舞台を見て弟子入りを決心。荷物を運び込むスタッフに混じってスタジオに潜入し、緊張で真っ赤な顔をして拳を震わせる東国原さんの姿に、たけしさんは刺されるかと思ったそうだ◆後半の知事時代の話は、「式典あいさつで起立した皆を座らせるのを忘れ、総務課長が座らせるようジェスチャーで伝えると勘違いして自分が座ってしまった」など爆笑を誘う失敗談がほとんど。筆者にはTBS系「プレバト〓」で詠まれた印象的な俳句が頭にあったので、もう少し県政の話が聞きたい気がした◆「向日葵や眠るむくろに頭(こうべ)垂れ」というのがその句で、むくろとは、2010年に宮崎県を襲った口蹄疫で殺処分された29万頭の牛。牛の鎮魂と農家への励ましを込めて広大なひまわり畑が生まれたという。講師の夏井いつきさんがその説明に心を打たれて詠んだ句は「向日葵や畜魂二十九万頭」だった◆お笑い芸人も政治家も「人々を幸せにする職業」だと小学6年生の時に言った東国原さん。県政の話など最小限にとどめ、笑える話を全編にちりばめたのは、90分で観客皆に幸せな気持ちになってほしいというサービス精神ゆえだろうか。      (里)

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