水害で流出した境界杭 日高町からアメリカへ

 平成23年9月の紀伊半島大水害で日高町から流出した地籍用の「境界杭」が、太平洋を渡ってアメリカに漂着し、さまざまな偶然が重なって再び同町に戻ってきた――。そんな奇跡の実話が絵本になった。「8000㌔を渡った杭 オーカスくん(杭に付けられた名前)」のタイトルで、杭製造会社の㈱リプロ(本社・岡山県岡山市)が発行し、杭のレプリカなどとともに同町へ寄贈。1本の杭がアメリカと同町をつなぐ架け橋となっている。
 杭は長さ30㌢で、プラスチックのゴミを再利用して製造。同町の地籍調査で志賀小学校北東の山中に設置されていたが、紀伊半島大水害で崩れて流出。溝を通って志賀川、西川を流れ、海に出たと考えられている。その後、黒潮海流などに乗って1年半かけ、8000㌔離れたアメリカシアトルのオーカス島に漂着。偶然、現地のトムさんが発見し、23年3月の〝東日本大震災のがれきの証〟としてアメリカのテレビ局に取り上げられた。震災のがれきとは直接関係ないが、たまたまそれを見ていた㈱リプロ・岡田謙吾社長のアメリカの友人が岡田社長に連絡。杭の上部には、設置された位置を示す6けたの数字が入っており、日高町の志賀に設置した杭であることが判明。現地で杭がないことも確認し、岡田社長が25年7月、アメリカにいって引き取り、再び元の場所に返した。仮に杭がテレビで放送されなかったら、プレートの番号が消えていたら、どこかの岩場で引っかかっていたらなど、一つでも偶然が欠けていれば起きなかった話だ。
 絵本のストーリーは岡田社長が、子どもたちに夢を持ってもらおうと考案。杭を主人公にして、東日本大震災の様子やオーロラを見たり、嵐に遭ったりするなど、冒険活劇風にアレンジし、「海の上だと場所が分からず、境界線を教える役目の大切さを実感した。杭は普段あまり気づかれないけど、みんなの大切な土地の境界を見守っているんだ」などとつづっている。絵本の文字は日本語と英語の両方で書かれており、日高町とオーカス島周辺の紹介ページもある。定価1800円。
 同町では、リプロから寄贈された絵本と杭の原寸大のレプリカ、長さ1㍍ほどの記念の杭を、方杭の温泉館「海の里 みちしおの湯」のホールに展示中。記念の杭の上部は専用のアプリをダウンロードしてスマートフォンでかざすと絵本の一部などを見ることができる。担当課は「偶然が重なって、1本の杭が日高町とオーカス島を結んでくれた。町のPRにもなり、ありがたい」などと話している。

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