熊楠が現代に伝えるもの

 先日、日高高校科学部有志の研究「高校生による南方熊楠の植物標本整理と現状調査」が、南方熊楠顕彰会の助成対象に選ばれた。
 熊楠は、本県出身の著名人の中でも特に型破りな存在。若い頃の写真をみると濃い眉、大きな目、意思の強そうな口元をしている。明治政府の急速な西洋化政策に伴う「神社合祀令」に反対したことはよく知られ、環境保護運動の先駆者とされる。
 
 神社合祀令とは市町村ごとに神社は1つと決め、合祀された神社の鎮守の森を伐採するという乱暴な政策。熊楠には、この政策が示す目先の効率などという卑小な価値観は無意味であった。その土地の生命活動のサイクルそのものを見つめ、無用な伐採の愚かさを承知していたのだろう。
 同部の研究は、7000点の植物標本を写真データ化し、将来的に一般公開できるよう整理すること。昨年は没後70年だったが、それだけの年月が経ってもまだ熊楠1人の遺した資料の全貌が見通せないこと自体に凄さを感じる。現地調査も同部の研究活動では重要なウエートを占めるが、那智は昨年の台風12号で様変わりし、山岳部員の協力なしには現地入りできないという。指導の土永知子教諭は以前から熊楠研究を行っており、現地にも災害前から調査に行っていた。「昔からの原生林は無事に残り、伐採個所や人工林などが被害に遭った。その違いは歴然としていた」とのこと。現実が熊楠の憂えた通りになっていることが強く印象に残った。
 文芸作品などでしばしば「巨人」と表現される熊楠。高校生が彼の研究成果を通じて世界観に触れることには頼もしさを感じる。さまざまな現象の本質を見通すスケールの大きな視点は、今の時代にこそ必要とされている。 (里)

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