些細なことから得る幸福感

 「幸福とは何か」。先日、由良町の興国寺夏期講座が開かれ、99歳の医師、日野原重明氏の講演を取材した。著名な講師とあって興味がわく。いざ始まると、99歳とは思えない流暢な語りで、冗談を交えながらその長い人生経験に基づく話や歴史上の人物の言葉を紹介。満員となった会場の熱気、残暑が感じられないほど聞き入ってしまう内容だった。
 取材前、日野原氏について調べてみると、こんなエピソードがあった。日野原氏は東京大空襲の際に満足な医療が施せなかった経験から「過剰投資ではないか」という批判を抑え、大災害や戦争の際など大量被災者発生時にも機能できる病棟として広大なロビーや礼拝堂施設を備えた聖路加国際病院の新病棟を建設。この備えの機能は地下鉄サリン事件の際にいかんなく発揮された。院長だった日野原氏の判断で事件後すぐに当日のすべての外来受診を休診にし、被害者の受け入れを無制限に実施。同日病院は被害者治療の拠点となり、朝のラッシュ時に起きたテロ事件でありながら、犠牲者を最小限に抑えることにつながったという。講演のなかで「平生からハピネス(幸福)を考えている」。エピソードに裏打ちされた、とても重みのある言葉だった。
 「幸福とは幸福感を持つこと」。平和や豊かさは幸せを感じにくくさせるが、他方で他人の小さな親切はじめ日常には幸福感を持たせてくれることがたくさんあるという。一定の年齢までは年を重ねると、当たり前のことが普通になって幸せを感じなくなる、と思う。成果に対して効率がいいとはいえないが、仕事(のこと)ばかりしているような毎日。些細なことで幸せを感じる心をもとう、そんなことに気づかせてくれる幸福な取材だった。  (笑)

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