シリーズ 「うつ病」 ② 杉村さんの場合その1

2010903-1.jpg 深い気分の落ち込みが長期間続き、不眠や食欲減退などの身体的不調を伴ううつ病。脳内の神経伝達物質の減少により、これらの症状が引き起こされるというが、神経伝達物質減少がどういう原因で少なくなるのかについてははっきりしていない。性格や生活環境、仕事の上での劇的な環境変化などのストレス、女性なら産後や更年期のホルモンバランスの崩れなど、いくつかの状況が重なった場合に発症すると考えられており、体の病気や薬の副作用が原因になることもある。シリーズ 「うつ病」 は今回から5回にわたり、実際にうつ病になって治療を受けた経験のある男性のケースを紹介する。 
 ■ある日、突然 日高郡内に住む杉村三郎さん(37)=仮名=は学生のころから福祉関係の仕事に興味があり、大阪にある大学を卒業後、県内の精神科の病院などで働き始めた。その後、仕事に関する国家資格も取得し、妻と幼い子どもと3人、社宅での生活は幸せな毎日だったが、30歳を過ぎたある日、まったく予想もしていなかった事件が起きた。  「私と子どもと別居してほしい」。妻の口から信じられない言葉が飛び出した。
  「え?」
 いわれたことの意味がわからない。冗談かと思ったが相手は真剣。何度も理由を聞いたが、はっきりしない。自分自身、暴力やギャンブル、借金、浮気など、別居を迫られるような理由はまったく思い当たらなかった。
 ■なぜ… まさに寝耳に水、晴天の霹靂。あまりに突然の要求に、「なぜ?」という言葉だけが頭の中に浮かんでは消える。話し合いの中で「離婚」という言葉も出た。家族がばらばらになってしまう。そんなことはテレビドラマの中の話であり、自分にはまったく関係のないことだと思っていた。気持ちの整理がつかないまま、3カ月間の別居を経て、正式に離婚することに決まった。離婚届に名前を書いて判をついた。しばらくして、役場から妻の戸籍が抜けたという除籍通知が届いた。妻が妻でなくなり、子どもは元妻が親権者となった。
 ■体に異変 杉村さんは、 この突然の別居↓離婚というライフイベントに強烈な精神的ダメージを受けた。とくに、「べったりだった」子どもと別れることがつらく、現実として受け容れることができない。仕事中も考えるのは子どものことばかり。さみしくて、つらくて、仕事に身が入らない。やがて夜も眠れなくなり、朝起きると、頭が痛く、重く感じるようになってきた。
 布団に入って目をつぶっても、子どもの顔が頭に浮かぶ。「もうこのことは考えたらアカン。早く寝ようと思っても、『お父さん』って呼んでる声が聞こえたり…」。明け方にようやく眠っても、ごく浅く1、2時間。子どもと離れて暮らすことにどうしても頭の整理がつけられず、じわじわと体の調子が狂いはじめた。

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