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記憶を風化させないために
2010年8月14日
御坊市出身、和歌山市在住の土屋英雄さんが不定期に随筆を投稿してくださっており、今月は11日付から15日付まで全5回で戦時中の出来事が綴られる。終戦から65年、記憶の風化が危惧される今、貴重な記録である◆戦地の兵士を描いた名作児童文学に竹山道雄著「ビルマの竪琴」がある。やさしい文体だが格調高い名文。新潮文庫版では著者の回想文や詳細な解説も収録され、背景がよくわかる◆主人公は放置された日本兵の遺骸を弔うため僧となり、ビルマに残った水島上等兵。彼のモデルはないが、「うたう部隊」を指揮する隊長にはモデルがいた。戦地で常に合唱していた隊があり、その隊長は皆に慕われ、危険な場所では部下達が敵弾の楯となり、叱ってもやめなかった。著者はその話をきいた後ある演奏会で彼を目にし、内心敬意を捧げた。著者自身は一高(現東大)講師で、多くの教え子の訃報を受けた。遺骨も遺髪もない葬儀に出席した経験から物語は生まれた。回想文では、終戦直後は軍を悪くいうばかりで戦死者を悼む記事などなく、この物語も検閲を受けて戦争が扱われているからと出版を差し止められたと述べられる◆あまりにも深い傷を負った時はそれに触れるのも苦痛となる。長い時間を経て初めて言葉になることもあるだろう。太平洋戦争にまつわる記憶は多くの人が胸の底に抱える。だが限りある紙面で紹介できるのはわずかしかない◆折に触れ、身近な人の戦時下の記憶や戦争体験から生まれた作品と向き合い、印象を自分なりにしっかり心に刻む。その繰り返しから、あるべき未来へ指針は醸成されるのではないか。受ける世代が意識して記憶に刻み続けなければ、歴史の風化は食い止められない。 (里) |
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